「韓国のトランプ」李在明、ポピュリズムで掴んだ勝利の代償とは?

SOUTH KOREA’S TRUMP

2025年6月6日(金)15時42分
木村 幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授、本誌コラムニスト)

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李在明の前任者の盧武鉉(写真)と文在寅(次ページ写真)は共に北朝鮮の指導者と対話を試みた REUTERS

彼の経歴を見ると、明らかな特徴がいくつかある。

1つ目は、李が進歩派陣営の中でも傍流を歩み続けたアウトサイダーだということである。

周知のように今日の共に民主党に連なる流れは、03年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)の主導によりつくられた「開かれたウリ党」に始まる。その中では盧の名前から「親盧」、後にはその事実上の後継者となった文在寅の名を取って「親文」と呼ばれた盧から文につながる人々が、党要職や閣僚、さらには大統領官邸スタッフの中心的地位を占めてきた。


対して、李はソウル郊外の一都市の弁護士から市長、そして道知事へとつながる経歴の中で自ら実績を積み上げてきた人物であり、22年大統領選の候補者に選出されるまでは、党や政府の要職を経験していない。

2つ目の特徴は、盧や文と異なり、李が民主化運動に参加した経歴を持たないことである。

1963年生まれの李の大学入学は82年であり、86年に司法試験に合格した。その直後に起こった87年の民主化運動は、彼が司法修習生時代のことだが、自伝には李がこの大きな流れにどのように関わったかは書かれていない。

司法試験合格直後の彼は、弁護士ではなく、裁判官か検察官を志望していたとされており、それが彼に民主化運動への参加を躊躇させたのかもしれない。

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