高所得国を目指す「新生」カンボジアで、日本の存在感が高まる理由...一方、発展を妨げる課題も
市場に流通する模倣品の種類としてはアルコールのほか、並行輸入品と同様に医薬品や化粧品、たばこが挙げられる。それら模倣品の約80%は中国から流入しているが、タイやベトナムで製造された模倣品がラオスやタイ、ベトナムといった隣国からの陸上で流入するルートや、タイランド湾に面したシアヌークビル港から海路を使い輸入される例もあるという。
こうした問題が公正な競争環境を阻害し、カンボジアを「マーケット」と見なす企業の事業だけでなく、税収にも悪影響を与えているのはたしかだ。例えば2020年に実施されたコンサルティング会社Kantar Internationalの調査によれば、例えば違法取引のたばこの割合は取引全体の18.5%を占め、これによる政府の歳入損失は約1000米万ドル(約15億円)にもなるとされていた。
「政府と協力して投資環境の改善に取り組んでいきたい」
こうした状況について現地で操業するある日本企業の駐在員は、「不正な取引の存在は弊社のビジネスにも影響を与えていると実感しています。カンボジアにおける法令を遵守する日系企業として、政府と協力して投資環境の改善に取り組んでいきたいと考えており、そのための準備は整っています」と説明する。
なぜ、カンボジアでここまで違法取引が横行しているのか。その一つの要因として若林氏は、「世界各国の腐敗や汚職を監視する国際的NGOが毎年、国別の腐敗認識指数をランキング形式で発表しているのですが、今年2月に発表されたランキングでカンボジアは180カ国中158位でした。アジアでは、それ以下にはミャンマーや北朝鮮くらいしかいません。汚職が蔓延している国と見られているということです」と、問題点を指摘する。
汚職、つまり税関職員など違法取引の関係者に賄賂が横行し、「それが当然のように稼ぎの一部として認識されている」という。しかし、2000万米ドルもの税収の損失を当局がいつまでも見過ごしているわけではない。