最新記事
ビジネス

高所得国を目指す「新生」カンボジアで、日本の存在感が高まる理由...一方、発展を妨げる課題も

2025年5月16日(金)10時30分
高野智宏

「不正な取引」はいくつかのパターンに分かることができる。その一つは、並行輸入された正規品が国内で違法取引されるケースだ。日本貿易振興機構(JETRO)プノンペン事務所の若林康平所長に解説してもらった。

「カンボジアには商業省に登録した正規販売代理店を保護する法律があり、それ以外の業者や個人が外国製品を並行輸入して国内で販売することが禁じられています。しかし、商品自体は真正品のため水際での摘発が難しく、違法に国内で流通し、販売されている例が見受けられます」

違法に販売される並行輸入品として目立つものとしては、自動車部品やオイル、医薬品、化粧品、たばこなどがある。商品としては正規品である並行輸入品の水際対策は困難であり、政府当局もその規模を把握しきれてはいないという。

さらに、例えばたばこについては別の問題もある。「本来であれば国内で販売するために必要なtax stamp(納税印紙)が貼付されておらず、またカンボジアの法律に沿った警告表示もない商品が売られていることが問題です」と若林氏は説明する。

カンボジアにとっても税収の逸失という問題がある

流通ルートとしては、輸入手続き自体は正規に行われているものの正規代理店以外が輸入しているのを税関で摘発できずにいる並行輸入に加え、密輸もあると見られる。「いずれにせよ、日本企業にとっては規制対象外の商品がマーケット環境を荒らし、公正な競争が妨げられています。さらにカンボジアにとっても、税収の逸失が大きいという問題があります」

また、別の「不正な取引」として模倣品の問題もある。JETRO(日本貿易振興機構)のバンコク事務所が2023年3月に発表した「カンボジアにおける模倣品流通動向調査」によれば、CCC(カンボジア模倣品対策委員会)が過去5年間に摘発し処分した模倣品の総量は1000トン以上となり、総額は約2000万米ドル(約29億4,000万円)を超えると推計されている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正中国が北京で軍事パレード、ロ朝首脳が出席 過去

ワールド

米制裁下のロシア北極圏LNG事業、生産能力に問題

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中