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日々の買い物や通院にも支障が......75歳以上の高齢者の4.3%は「交通弱者」

2025年4月16日(水)11時20分
舞田敏彦(教育社会学者)
シルバーカーで買い物に出かける高齢者

シルバーカーで買い物に出掛ける高齢者 photoAC

<地方の過疎地を中心に、鉄道やバスなど公共交通機関にアクセスしづらい高齢者が増えている>

最近、全国各地でスーパーの閉店が相次いでいる。地域の人口が減り、採算が取れないと判断した上で、だ。遠方の店に行こうにも、高齢者の場合、運転免許を返納してしまっていて自家用車を使えない人も多い。過疎地では、公共交通機関を使うのも容易でない。

「交通弱者」と言われる人たちがいる。自家用車など、自前の交通手段を持たず、かつ公共交通機関の利用も制限されている人たちだ。その多くは高齢者だろう。2023年の総務省『住宅土地統計』によると、75歳以上の単身世帯、ないしは双方とも75歳以上の夫婦世帯は672万9600世帯。このうち、最寄り駅から2キロ以上かつ最寄りバス停から1キロ以上離れている世帯は28万8400世帯。これを基準として考えると、後期高齢世帯のうち交通弱者の世帯は4.3%ということになる。


当然、この数値には地域差がある。子どもと同居していない後期高齢世帯のうち、公共交通機関の利用がままならない世帯は何%か。47都道府県別に計算し、高い順に並べると<表1>のようになる。

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全国値は4.3%だが、都道府県別に見るとかなりの違いがある。公共交通網が発達している東京や大阪では、交通弱者の世帯はほとんどない。それに対し、値が最も高い徳島では16.2%、その次の熊本では14.0%にもなる。

何とか自家用車を使っているのかもしれないが、75歳以上の高齢となると運転には危険が伴う。かといって駅やバス停は離れていて、鉄道・バスは使いにくい。日々の買い物や通院に支障が出ている交通弱者、ないしはそれに準ずる予備軍とみていいだろう。

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