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国際秩序

もう元の世界には戻れない...トランプ流ディストピアで始まった「新たな世界史」の行き着く先は?

AMERICAN SUICIDE

2025年4月14日(月)16時16分
ヨシュカ・フィッシャー(元ドイツ外相)

国内ではイーロン・マスクにコスト削減の名の下に政府の解体を許している。職員の大量解雇は長期的な後遺症を残すだろう。途上国を支援してきた米国際開発庁(USAID)の大幅な資金削減によって、世界の脆弱な国々で数十万の死者が出る可能性がある。

こうした残酷で無分別な破壊行動を目の当たりにし、人は本質的な問いを立てざるを得ない。トランプの行動はアメリカを強くするのか、と。


世界におけるパワーと影響力を保持するというアメリカの国益から考えると、答えは「ノー」と言うほかない。アメリカは弱体化しているどころか、自滅に向かっているようだ。

アメリカがヨーロッパと敵対したところで得られるものはない。この数十年の間、軍事同盟と貿易関係で強く結ばれた「西側」があればこそ、アメリカは冷戦に勝利し、歴史上最も強力な超大国となったのだ。

それを捨てて誰の得になるのか。喜ぶのはアメリカが自滅するのを静かに待っているロシアと中国だけだ。

既に確かなのは、もう以前の国際秩序には戻らないということだ。トランプはアメリカの信頼を失墜させた。アメリカはこの先も大西洋と太平洋に挟まれた地政学的地位を享受するだろうが、世界はトランプ主義が米政治に根付いたことを知るはずだ。

「西側」の消滅とアメリカのリーダーシップ(と民主主義)の崩壊は、21世紀の国際政治を劇的に変えるはずだ。超大国の椅子取りゲームで戦争のリスクが高まり、アメリカ社会は陰謀論に陥りやすくなるだろう。

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