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「母親になるべきじゃなかった」と断言する、3人の子を持つ女性。楽になったきっかけは...

2025年2月23日(日)21時10分
印南敦史(作家、書評家)

そういった言葉は、自分たちの周囲にいた"母になった人たち"の口からは一度も聞いたことがなかったそうだ。

だが、同書が日本でも『母親になって後悔してる』(鹿田昌美・訳、新潮社)というタイトルで出版されたのちにSNSで検索した結果、同じような思いを抱えた読者の多さを実感。そこから日本の母親たちへの取材が始まり、「クローズアップ現代」での放送と本書の書籍化につながった。

「子どもが生まれてこなければよかった」ではない

社会が要求する母親像への違和感、アイデンティティの喪失、キャリア形成の難しさ、母親が抱く罪悪感など、さまざまな角度から現実が明らかにされていくが、やはり最も説得力があるのは1章から7章までにおよぶ"後悔を抱いたことのある母親へのインタビュー"だ。

私が特に印象深く感じたのは、冒頭に登場する美穂さんという取材当時49歳の女性だった。

大学生の長男、高校生の長女、中学生の次男と3人の子どもを育てている彼女の笑顔は柔らかく、訪ねた東京郊外の一軒家も温かみのある空間だったというが、それらと投稿フォームに送られてきた本人のメッセージとは結びつきにくいものでもあった。


 もう母親をやめました。絶対に向いていなかったし、得より損ばかりしてきました。母親なんてやってられない、私が20年で感じたことです。(投稿フォームより。2022年5月)(21ページより)

重要なポイントは、母親になるべきじゃなかったと思うことは、「子どもたちが生まれてこなければよかった」という意味ではないと彼女が主張している点だ。

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