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尹大統領拘束後に与党の支持率がなぜかアップ...韓国野党が抱える「裁判沙汰」の大問題とは?

Divided Loyalties

2025年1月21日(火)15時49分
ミッチ・シン(ディプロマット誌韓国特派員)
尹錫悦大統領を拘束すべく、大統領公邸のバリケードを乗り越える捜査員たち

捜査員らは大統領公邸を囲むバリケードを乗り越えて尹を拘束した CHRIS JUNGーNURPHOTOーREUTERS

<現職大統領の弾劾で「次の大統領」についての議論も盛んだが、野党の李在明には「票を入れたくない」という国民が多い──>

韓国史上、初めて現職大統領が身柄を拘束された。

昨年12月の戒厳令(非常戒厳)宣布をめぐって、韓国の高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)や警察から成る合同捜査本部は1月15日、ついに尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を内乱容疑で拘束した。

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尹は事情聴取に向けた出頭要請を繰り返し拒否し、公捜庁は1月3日に拘束令状の執行を試みたものの、大統領警護庁の抵抗を受けて断念していた。

尹は拘束前、自身の弁護士らによって公開された動画で公捜庁を批判。内乱容疑の捜査を行う憲法上の権限を持たないと重ねて主張した。さらに、拘束令状は違法だと一方的に述べ、「韓国の法治は崩壊している」と訴えた。

【動画】尹錫悦大統領が拘束前に公開した国民向けメッセージ動画と日本語訳全文

しかし、刑事司法制度に関わる韓国政府機関は一つとして、尹の主張に同意していない。公捜庁の捜査の正当性は司法機関が明確に認めており、拘束令状は裁判所によって発行されている。

法律専門家の間では、尹の拘束に成功したのは韓国の法制度が機能し続けている証拠であり、法を超越することは誰にも許されないと指摘する声が上がる。

尹の弾劾の妥当性を判断する憲法裁判所では1月14日、弾劾審判の初の弁論が開かれた。ただし、尹が出席しなかったため、開廷からわずか4分間で終了している。尹の拘束翌日には、公捜庁の取り調べを理由とする尹側の延期要請を退けて、2回目の弁論が予定どおり開かれた。

憲法裁の裁判官は現在8人で、そのうち6人以上が弾劾を妥当と判断すれば、尹の罷免が決まる。その場合、60日以内に大統領選が実施される。

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