最新記事
米大統領選

銃撃を受けたトランプの下に団結し、無敵の高揚感に包まれた共和党

“THE ELECTION’S OVER”

2024年7月24日(水)13時59分
ジム・ニューウェル(スレート誌政治記者)
共和党全国大会

トランプを大統領候補、バンス上院議員を副大統領候補に指名し、盛り上がって閉幕した共和党全国大会(7月18日) AP/AFLO

<「弾劾され、逮捕され、有罪になり、銃撃され」た英雄、トランプの下で団結を確信した赤い波>

2024年の米共和党全国大会(党大会)は幸せな空間だった。これは異例なことだ。近年は大統領候補の指名受諾者が誰であれ、会場にはいつも大きな不満が渦巻いていた。もし今回も党内では広く不満があったとしたら、会場にいた参加者は見事にそれを隠していた。

大統領候補に指名された人物が1週間足らず前に銃撃されたことを考えれば、晴れやかな状況がことさら異例に思える。参加者たちはなぜ、暗殺未遂の衝撃を瞬時に乗り越えて歓喜に沸いたのか。


ひとつ言えるのは、共和党員が自分たちは無敵だと感じている、ということだ。

6月末のテレビ討論会でジョー・バイデン米大統領が悲惨な姿をさらして民主党の自滅が始まる前から、ドナルド・トランプ前大統領は既に選挙戦をリードしていた。討論会後はさらにリードを広げ、暗殺未遂を生き延びた。現時点でリードをさらに広げている可能性が高い。

勝ったも同然の陶酔感

共和党は、トランプの大統領在任中には経験したことがない陶酔感に浸っている。これは異例だ。「ほとんど神の摂理に近いものがある」と、同党のロジャー・マーシャル上院議員(カンザス州)は言う。

共和党は最近、些細なことを気にしなくなった。党大会に向けて不満があったとすれば、トランプ陣営が党綱領案で人工妊娠中絶をめぐる表現を和らげたことだ。だが暗殺未遂の後は、もう誰も気にしていない。

11月の本選で誰と対決するのかというもっと大きな問題さえ、彼らは心配しなくなりつつある。今や民主党は「カマラ・ハリス(副大統領)を立てることはできないだろう」とマーシャルはみる。「彼女がノーと言うはずだ」。民主党が負けそうな選挙でいけにえの子羊になりたくない、というわけだ。

社会保守主義団体「アメリカン・プリンシプルズ・プロジェクト(APP)」のテリー・シリング代表は、バイデンを選挙戦から撤退させようとする動きは失速するのではないかと語る。「アメリカがトランプを選ぶ可能性がはるかに高くなった今、将来の有望株を1人、無駄遣いしたくはないだろう」

APPは党大会2日目の7月16日に、会場となったウィスコンシン州ミルウォーキーのファイサーブ・フォーラムの外でイベントを開催した。APPはこの日、トランスジェンダーの女子選手を女子部門に参加させることに抗議している元大学競泳選手のライリー・ゲインズに、カスタムバイクを贈呈した。イベントに参加したカスタムバイク界のスター、ポール・タットルSr.は、「私が考えているのは(トランプが)勝たなければならないということだけだ」と語る。「誰と戦うかは関係ない」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中