最新記事
発がんリスク

タトゥーは安全か? リンパ腫発症リスクの増大を示唆する研究

Scientists Warn Tattoos May Increase Cancer Risk

2024年6月11日(火)15時30分
パンドラ・デワン
(写真はイメージです) Lucas Lenzi-Unsplash

(写真はイメージです) Lucas Lenzi-Unsplash

<健康に対するタトゥーの影響が再び注目され、リンパ腫リスク増加の可能性が示唆された>

タトゥーがリンパ腫の発がんリスクを増大させる可能性があるという研究結果が発表された。健康に対するタトゥーの長期的な影響について、さらなる調査を急ぐ必要があると専門家は指摘する。

ピュー・リサーチ・センターの2023年の調査によると、米国人はおよそ3人に1人がタトゥーを入れている。だが健康に及ぼす長期的な影響についてはほとんど分かっていない。

スウェーデン・ルンド大学の研究チームは1万1905人を調査の対象として、タトゥーがリンパ腫の発がんリスクに影響を及ぼす可能性を調べた。リンパ腫は血液のがんで、白血球で発生する。

今回の研究を率いたクリステル・ニールセンは、「我々は人口登録を通じ、リンパ腫と診断された人々を特定した」と声明で述べている。「続いてこのグループを、性別と年齢が同じでリンパ腫にかかっていない対照グループと比較した。参加者にはライフスタイルに関するアンケートに答えてもらい、タトゥーを入れているかどうかを判断した」

「喫煙や年齢など、それ以外の関連要因を考慮しても、タトゥーを入れている人のリンパ腫発症リスクは21%高いことが分かった」

この関係の背後にある仕組みは不明だが、タトゥーインクに対する体の反応と関係がありそうだとニールセンは推測する。「タトゥーインクが皮膚に注入されると、体があってはならない異物と解釈して免疫が活性化する。インクの大部分は皮膚からリンパ節に運ばれ、そこに蓄積される」

このため研究チームは、大きなタトゥーの方が小さなタトゥーに比べてリンパ腫のリスクは大きいと予想した。インクの量が多いため体の反応も大きいという理由だが、サイズは問題ではないようだった。

ニールセンは言う。「なぜそうなのかはまだ分からない。ただ、タトゥーが大きさに関係なく体に軽度の炎症を引き起こし、それが翻ってがんを引き起こす可能性があるとは推測できる。その構図は我々が当初考えていたよりも複雑だ」

そうした結論は純粋な連想であり、これを裏付けて、タトゥーインクが実際にリンパ腫のリスクを増大させていることを実証するためにはさらなる研究が必要とされる。研究チームはほかのがんや炎症性疾患のリスクを増大させる可能性についても探りたい意向だ。

「人々はタトゥーを通じて自分自身を表現し続けたいと思うだろう。従って、我々は社会として安全性を保障することが重要だ。個人としては、タトゥーが自分の健康に影響を及ぼす可能性があると認識し、タトゥー関連と思われる症状が表れた場合は医師の診察を受ける必要がある」とニールセンは話している。

論文はオンライン医学誌「eClinicalMedicine」に掲載されている。

(翻訳:鈴木聖子)

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

カンボジア、タイとの国境紛争で国際司法裁判所に解決

ワールド

米ミネソタ州議員銃撃、容疑者逮捕と報道 標的リスト

ビジネス

午前の日経平均は反発、円安が支援 中東情勢警戒はく

ワールド

イラン、イスラエル北部にミサイル攻撃 国際社会は沈
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中