最新記事
東西対立

NATO、ロシア国境近くに防空システムを配備

NATO Moving Missiles Closer to Russia's Borders

2024年3月11日(月)15時24分
ケイトリン・ルイス
パトリオット地対空ミサイル

ポーランドの別の場所から首都ワルシャワ近くに再配備されたパトリオット地対空ミサイル(2003年2月) (Photo by Jaap Arriens/NurPhoto)

<「次の標的」を懸念するバルト3国の声に応え、地対空ミサイルなどを配備へ。大規模な演習も進行中だ>

NATO諸国が、バルト海に面したリトアニアに防空システムを設置する。ロシアの脅威に直面するリトアニアなどバルト3国の要望に応えたものだ。

リトアニアのアルビダス・アヌサウスカス国防相は3月7日の記者会見で、この防空システムの運用は年内に始まる予定だと述べた。NATOは昨年夏にリトアニアの首都ビリニュスで行われた首脳会議で、加盟国が順繰りにバルト諸国に防空システムを展開することで合意した。

 

アヌサウスカスは、第一弾としてリトアニアに防空システムを送り込むのがどの国になるかは明らかにしなかった。ただし、送り込まれる兵器に対空防衛システムのパトリオットで、それもパトリオットはアメリカではなく欧州のNATO加盟国から提供されると語った。

リトアニア国営テレビ・ラジオ局は「この運用が数カ月間、1度きりで終わるのではなく、継続的にわが国の防空能力を大幅に引き上げることが期待される」というアヌサウスカスのコメントを伝えている。

「NATOvsロシア」に拡大?

ロシアのウクライナ侵攻の行き着く先は、ロシア対NATOの大規模な戦争になるのではないか----そんな懸念の声が複数の欧州諸国から上がっている。ここ数カ月、NATOはロシアやベラルーシとの国境沿いの防衛システムの段階的な強化に努めてきた。ロシアと国境を接するポーランドや、リトアニアとラトビア、エストニアのバルト3国などの国々で、加盟32カ国全てから集まった9万人を超える兵士が参加する演習を行ってもいる。

NATO諸国の中でもバルト3国など一部の国々は、ロシアの次の侵攻に備えるべきだと強く訴えている。エストニアの情報当局は、ロシアが今後10年以内にNATO諸国に対する戦争を準備していると主張している。

ウクライナでの戦争が始まって以降、ロシアと欧米との緊張は高まったままだ。NATOはウクライナを支援する姿勢を堅持している。

一方でロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ政府にNATOが影響力を及ぼしていることを、侵攻に「踏み切らざるを得なかった」理由の1つとして挙げている。またプーチンは、ウクライナが中立維持に同意しない限り侵攻を終わらせるわけにはいかないとも述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アルゼンチンCPI、4月は前年比+289.4% ピ

ビジネス

ボーイング、起訴猶予合意に違反 米司法省が見解 訴

ビジネス

米地銀NYCB、住宅ローン関連債権約50億ドルをJ

ビジネス

米インフレは依然高水準、FRBはまだやるべきことあ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中