最新記事
ロシア

真剣な顔でプーチンの演説を聞くロシア議員、その耳には「麺」がブラブラ...処罰の見通し

2023年3月10日(金)17時23分
デーン・エネリオ
ロシアのプーチン大統領

年次教書演説を行うプーチン大統領(2月21日) Sputnik/Pavel Bednyakov/Kremlin via REUTERS

<議員はプーチンの演説に対して「私は全面的に支持する。まったく同感だ」とコメントしたが、その本当の意味は...>

今年2月、ロシア西部サマーラ州の議員が両耳にスパゲッティらしきヌードルを引っかけた姿で、大統領ウラジーミル・プーチンの演説を聴く自身の動画をソーシャルメディアに投稿。この議員が近く、告訴される見通しとなった。

■【動画】真剣な表情と、耳からぶら下がったヌードル...議員が投稿した意味深な動画

ロイター報道によると、サマーラ州の議員ミハイル・アブダルキンは、ロシア軍の「信用を失墜させた」と非難されている。

ロシア共産党員であるアブダルキンに対する捜査が始まったのは、プーチンが2月21日に年次教書演説を行ったあとだ。アブダルキンは翌22日に、そのスピーチを先述した姿で視聴する自身の動画を、ロシア版フェイスブックと言われるソーシャルメディアVKに投稿していた。

プーチンは21日に行った2時間に及ぶ演説で、米国とロシアが結んでいた核兵器の軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」への参加を停止すると述べている。これに対してアブダルキンは、「私は全面的に支持する。まったく同感だ。こんな演説を耳にしたのは23年ぶりだ。嬉しい驚きである」というコメントを出している。

ロシアでは、誰かが耳にヌードルを引っかけていると、「だまされている」という意味になる。動画内の姿はこのロシアのことわざにちなんだものであり、そうなるとアブダルキンが出したコメントの意味も変わってくる。

サマーラ州議会では2月28日、アブダルキンに懲戒処分を課し、ロシア共産党からの除名を進めるための採決がとられ、37名が賛成票を投じたと、ロシアの有力紙コメルサントは報じた。党も、プーチンを嘲笑するような態度をとった同議員を処罰すると表明している。

インデペンデント紙の報道によると、ロシア共産党の報道官アレクサンドル・ユシチェンコは2月23日、党がこの件について独自に調査を行うことを認めた。

アブダルキンは、自身のVKページに声明を投稿し、3月7日にサマーラ州の都市ノヴォクイビシェフスクにある裁判所に出頭する予定であると述べた。「自分は無関係で、無実であることを証明するために戦うつもりだ」。インデペンデント紙は、ロシア独立系メディアのメドゥーザに掲載された翻訳文を引用してそう報じた。

ロシアでは2022年3月に行政犯罪令が改正され、プーチンが署名して成立した。その第20条3の3では、個人がロシア軍の「公的信用を失墜させる」行為を行った場合には処罰されると定められている。

ロシアでは、同様のケースはほかにも起きている。モスクワの南に位置するトゥーラ州では2022年4月、6年生の少女が美術の授業中に反戦の絵を描いたとして教師が通報。それを受けて、児童の父親が警察に逮捕された。
(翻訳:ガリレオ)

■【写真】授業で「反戦」の絵を描いたロシアの6年生を教師が通報...父親は逮捕、本人は孤児院へ

ニューズウィーク日本版 ジョン・レノン暗殺の真実
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

オラクル9-11月決算、注目指標が予想に届かず 時

ビジネス

ブラジル中銀、4会合連続で金利据え置き タカ派姿勢

ビジネス

米財政赤字、11月は前年比53%縮小 輸入関税が歳

ビジネス

米金利先物市場、1月据え置き観測高まる 26年に利
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中