最新記事
台湾

有事にもろい台湾ネット環境 衛星回線の容量は海底ケーブルのわずか0.02%

2023年3月20日(月)14時48分
ロイター
馬祖島・南竿地区を歩く住民

2月に台湾本島と結ぶ海底ケーブル2本が切れて島民1万4000人がインターネットに接続できなくなった馬祖島・南竿地区(2021年1月撮影 ロイター/Ann Wang)

台湾が、中国に侵攻された場合に外界と通信できる手段を確保しようと奔走している。ロイターが複数の専門家や当局者に取材したところ、重要な海底ケーブルの復旧は平時でさえ迅速に進まないことや、バックアップの通信衛星網も整備されていないという厳しい現実が浮かび上がってきた。

中国は台湾への武力侵攻を一貫して排除せず、近年は軍事的にも政治的にも台湾への圧力を一段と強めつつある。

そこにウクライナの戦争が起き、台湾では安全保障強化の切迫感があらためて強まった。特に、中国によるサイバー攻撃、あるいは世界とのインターネット通信を支える14本の海底ケーブル切断への備えだ。

台湾国防部直属のシンクタンク、台湾国防安全研究院(INDSR)のアナリスト、ツェン・イスオ氏は、特にウクライナ戦争が始まって以降は、内外との戦略的通信に関する問題を考えると夜も眠れなくなると明かした。

解決策の1つとして当局が想定するのが低軌道衛星で、既に外国の衛星通信サービス企業を活用してインターネットサービスを拡充する2年間の試験プログラムを始動させている。

ドメイン管理を手がける台湾網路資訊中心(TWNIC)のケニー・フアン最高責任者によると、問題は台湾が使う衛星通信の回線総容量が海底ケーブルのわずか0.02%程度しかないこと。フアン氏によると、台湾では外資の持ち分を49%までに制限する厳しい規制が存在する一方、これといった優遇措置はないので、外国の衛星通信サービス企業に投資意欲を持ってもらうのに苦労しているという。

同氏は「外国企業向けの優遇措置はほとんど見当たらない。規制も変えなければならない」と述べた。

ウクライナはロシアに侵攻された後、実業家イーロン・マスク氏が率いるスペースXの衛星通信サービス「スターリンク」を各種通信に積極利用している。ただ台湾の国防専門家は、中国事業を抱える民間企業に依存する危険性を心配する。

INDSRのツェン氏は、マスク氏の米電気自動車(EV)メーカー、テスラが中国で車を販売している点に触れて「(台湾よりも)中国市場の方をマスク氏が気にかけるかどうかは分からない。(しかし)われわれは1社だけに運命を託すことはしない」と語った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック小幅続落、メタが高

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、156円台前半 FRB政策

ビジネス

FRB、準備金目標範囲に低下と判断 短期債購入決定

ビジネス

利下げ巡りFRB内で温度差、経済リスク綿密に討議=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中