最新記事

英王室

【英王室】2人が「うっとうしいカップル」であることをまずは認めるべき

The “H” and “M” Problem

2023年1月11日(水)14時26分
ルイス・ステープルズ(カルチャーライター)
『ハリー&メーガン』

リアリティー番組的なわざとらしさが漂うが、差別に対する告発も COURTESY OF PRINCE HARRY AND MEGHAN, THE DUKE AND DUCHESS OF SUSSEX

<話題作『ハリー&メーガン』でも「かなりイラつくカップル」のハリー王子とメーガン妃。2人のウザさと不快感を素直に感じて認めることこそが、2人への理解につながる>

あの夫妻の新たな行動に、イギリスの保守派が猛反発するのに時間はかからなかった。

ネットフリックスのドキュメンタリー作品『ハリー&メーガン』の前半の3話が配信されたのは昨年12月8日。その直後からメーガン妃批判派はあら探しをする狙撃手のように、少々不発だった場面に狙いを定めた。故エリザベス女王に紹介された際の様子を、彼女が再現したくだりだ。

女王と対面したときは独特のお辞儀をすべきことも、お辞儀の仕方も知らなかった。冗談めいたそぶりで、そう振り返ったメーガンへのばかげた非難の最高峰は、英タブロイド紙デイリー・メールのコラムニスト、サラ・バインのこんなツイートだ。

「メーガンが私たちの文化を嘲笑することが、なぜ許されるのか? それとも人種差別は一方通行でしかあり得ないのか?」

比較的無害な物事をねじ曲げて、メーガンの「悪事」だとヒステリックに騒ぎ立てる一派を前にして、イギリス人の筆者はいつもの脱力感に襲われた。メーガンに対する英王室と英メディアの態度にぞっとしている者たちは、これでまた擁護の論戦に突き進むだろう......。

この手の泥仕合を避けるには、ヘンリー王子とその妻をめぐる基本的な真実をファンも遠慮なく認めればいいのではないか。つまり、2人は確かにひどい扱いを受けてきたが、今回のドキュメンタリーがありありと示すように、正直なところかなりイラつくカップルでもある、と。

不快だけど正しい2人

こんなことを言うのは、『ハリー&メーガン』の多くの部分にうんざりしたからだ。

番組は素顔の「H」と「M」――2人はしつこいほど、互いをイニシャルでそう呼び合う――というイメージを与えようと懸命だが、夫妻は台本どおりに動くリアリティー番組の出演者に見えることがしばしばだ。

英メディアや英王族にどう扱われてきたかを論じる言葉には真実味があふれる一方、出会った頃を振り返る場面はわざとらしくて、ぎこちない。

それでも筆者は当初、夫妻が鼻につく理由を語るつもりはなかった。客観的視点や品位を保つことに無関心な者が大半である批判派と、政治的に結び付けられたくはない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー

ワールド

焦点:中国農村住民の過酷な老後、わずかな年金で死ぬ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中