最新記事

フィリピン

南シナ海でわが物顔の中国を警戒、米比が防衛協力拡大で合意

Philippines reports fresh clash with China as U.S. reaffirms defense pledge

2022年11月22日(火)16時48分
ジョン・フェン

合同訓練のため米沿岸警備隊を歓迎するフィリピンの沿岸警備隊員(8月30日) Eloisa Lopez-REUTERS

<フィリピンが実効支配するパグアサ島の近くで、フィリピン海軍が海面に漂う不審な金属片を回収したが、中国海警局の船に強奪された。翌日、ハリス米副大統領が到着した>

11月20日、フィリピンと中国が領有権を争っている南シナ海の島の沖合で、両国の軍による小競り合いが勃発した。翌21日には、カマラ・ハリス米副大統領が、アジアで最も古いアメリカの同盟国であるフィリピンを訪問し、防衛協力を拡大することで合意した。

フィリピン海軍のアルベルト・カルロス中将は、中国軍との一件について声明を発表。スプラトリー(南沙)諸島のうち、フィリピンが実効支配するパグアサ島の近くで、フィリピン海軍が海面に漂う不審な金属片を回収して持ち帰ろうとしたところ、中国海警局の船がそれを妨害して浮遊物を強奪したと主張した。

カルロスによれば、フィリピン海軍は20日、パグアサ島(中国名は中業島)から約800メートル沖合の海面に浮遊物があるのを発見。回収するためにゴムボートにロープでくくりつけて、島まで曳航していた。

すると「5203」の番号が記された中国海警局の船がゴムボートに接近してきて、「2回にわたって進路を妨害」。中国側もゴムボートを出してフィリピン側のボートに近づくと、「ロープを切って強引に浮遊物を奪い去った」。カルロスによれば、この件で怪我人は報告されていない。

浮遊物は中国が発射したロケットの残骸か

フィリピン軍西部司令部のシェリル・ティンドン報道官は、海面に浮遊していた金属片について、最近フィリピンの領海で相次いで発見された中国製ロケットの残骸によく似ていると述べた。

ホーチミン(ベトナム)在住の海事評論家であるズアン・ダンはツイッターへの投稿で、公開されている船舶追跡データから、中国海警局の船舶「5203」および数多くの「中国海上民兵の船舶」が20日、パグアサ島の近くを航行していたことが示されていると述べた。

中国は南シナ海で、いわゆる「九段線」内の全ての島や礁、砂堆の領有権を主張している。オランダのハーグにある国際仲裁裁判所は2016年、この九段線には法的根拠がなく無効だと認定した。フィリピンと中国が争ったこの裁判の判決を受けて、アメリカをはじめとする複数の国がフィリピンへの支持を表明したが、中国は判決を全面的に拒否した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 6

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中