zzzzz

最新記事

中国

習近平に仕える6人の「無力な男たち」...それでも、彼らであるべき理由があった

Xi’s Men

2022年11月1日(火)19時28分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)

■丁薛祥(ティン・シュエシアン、序列6位)

いわば習の首席補佐官。2007年から敏腕の行政官として習のために働き、ずっと緊密な間柄を保ってきた。頭脳明晰、極めて有能だが、個人的なコネや地盤はないので、習にとっては安心できる同志だ。

まだ60歳で6人中の最若手。主として中央官庁で補佐官的な職務に徹してきた生粋の行政官でもある。だから生き残るすべにたけており、自ら大きな野心を抱きそうなタイプには見えない。ただし油断は禁物。こういうタイプこそ、予想に反して権力の頂点へ駆け上る可能性がある。

■李希(リー・シー、序列7位)

趙楽際の後継として中央規律検査委員会のトップに就いた。やはり昔から習と連携する仲で、一緒に写真に納まることも多い。かつて習の父親に近い関係者の下で働いたのが2人の縁の始まりとされる。

広東省をはじめ、経済的に重要な地方の党委書記を務め、実務的な手腕を発揮してきた。あくまでも習近平の意向を優先しながら、現場では停滞する経済の改革を進めるという難しい役目を、この男なら引き受けられる。いずれは首相職を継ぐ可能性もある。

◇ ◇ ◇


つまり、新しい常務委員の顔触れを見るに、誰一人として習近平の後継にふさわしい人物はいない。だが冷酷なる自然の摂理は政治家どもの都合など気にかけない。

習はまだ69歳だが、長年にわたる政治家生活(往々にして豪勢な飲食の機会を伴う)で体を痛めつけてきた。だから健康不安はある。12年に何週間も姿を見せなかったときは、痛風が悪化したのではという噂が飛び交ったものだ。

もしも習が急に死んだらどうなるか。明確なナンバー2がいない以上、後継争いは熾烈になる。そして真の後継者は、現在の党指導部以外のところから現れるのではないか。これは筆者の推測にすぎないが、習が去った場合、短期的には集団指導体制が復活し、いったんは独裁色が弱まる。ただし結局は、強力な地縁血縁に恵まれたプリンス(太子)が新たに出現するだろう。

ちなみに習は慎重な男だから、そうしたプリンス候補を権力の中枢から遠ざけてきた。現に彼らの多くは政治に首を突っ込まず、民間部門でキャリアを築いている。全ては習の計算どおり、なのかもしれない。

From Foreign Policy Magazine

20240604issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月4日号(5月28日発売)は「イラン大統領墜落死の衝撃」特集。強硬派ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える グレン・カール(元CIA工作員)

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾との平和的統一の見通し悪化、独立「断固阻止」と

ワールド

北朝鮮、韓国に向け新たに600個のごみ風船=韓国

ワールド

OPECプラス、2日会合はリヤドで一部対面開催か=

ワールド

アングル:デモやめ政界へ、欧州議会目指すグレタ世代
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 4

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 5

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...…

  • 6

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 7

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「…

  • 8

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 9

    米女性の「日焼け」の形に、米ネットユーザーが大騒…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 7

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中