最新記事

イギリス

トラス英次期首相、内憂外患で山積する課題に直面

2022年9月6日(火)16時48分

しかしEU側は、新政権がこうした一方的行動を撤回しない限り、世界最大の研究開発助成プログラム「ホライズン」で英科学者に提供する枠を減らす対抗手段を行使するかもしれない。この対立は最終的に貿易戦争に発展しかねない雲行きと言える。

トラス氏は、まだ英国内で適用されているEUの法令を来年までに全て廃止する方針も表明している。

難民問題

英政府はこれまで、英仏海峡を小型船で渡航してくる亡命希望者をいかに減らすかに苦心を重ねてきた。

複数の政府関係者の話では、今年これらの人数は最大6万人と、過去最高だった昨年の2倍に達する恐れが出てきた。

そこで今年4月、政府は海を渡ってきた亡命希望者の一部をルワンダに移送し、同地で亡命手続きを行わせる計画を発表。その第1便出発は、欧州人権裁判所(ECHR)が直前に差し止めを命令した。

トラス氏は亡命希望者移送計画について、移送先となる国を拡大すると約束した。同氏はこの計画を断行する決意を示すとともに、ECHRが阻止し続けるならば英国はECHRを脱退するための法制化を進めるとしている。

ウクライナ

ロシアのプーチン大統領は、この冬に欧州が経済的痛みに耐えかね、ロシアのウクライナ侵攻に反対姿勢を後退させることを期待している。

英国はこれまでのところウクライナに対する最大の軍需物資支援国の1つで、約7000の対戦車兵器や数百のミサイル、戦闘装甲車を供給してきた。ウクライナ兵の軍事訓練も行っている。トラス氏はこうした英国のウクライナ向け軍事・経済支援を継続すると約束した。

問題は、ウクライナへの国際的な支援が弱くなる場合にどうなるかだ。

ただトラス氏は保守党党首選で、自身が首相になればウクライナにとって英国は「これ以上ないほど強力な同盟国」になると発言している。


[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国と中国、外交・安保対話開始へ 3カ国首脳会合前

ワールド

岸田首相、日本産食品の輸入規制撤廃求める 日中首脳

ワールド

台湾の頼総統、中国軍事演習終了後にあらためて相互理

ビジネス

ロシア事業手掛ける欧州の銀行は多くのリスクに直面=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 8

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシ…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中