最新記事

事件

「神の国実現のため」献金していた元信者が証言 「旧統一教会の実態」と「安倍ファミリーの関係」

2022年7月15日(金)15時45分
多田文明(ルポライター) *PRESIDENT Onlineからの転載
安倍晋三元首相

2020年8月28日、辞任表明の記者会見に臨んだ安倍晋三首相(当時) REUTERS


安倍晋三元首相の銃撃事件で、逮捕された山上徹也容疑者は「『統一教会』に恨みがあり、安倍元首相が近しい関係にあると思ってねらった」と供述していると報じられている。実際に「世界平和統一家庭連合」(旧・統一教会)は、山上容疑者の母親が信者だったことを認めている。母親が熱心な信者だった頃に、同じく信者だったというジャーナリストの多田文明氏が、自身がみた旧統一教会の実態を振り返る――。


旧統一教会「中の人」が語る、献金・献金・献金の日々

安倍晋三元首相(享年67)が凶弾に倒れました。手製の銃で襲撃した山上徹也容疑者(41)は「母親が宗教団体にのめり込んで破産して、家庭が崩壊した」「安倍氏はその宗教団体のつながりがあり、恨みをもっていた」と供述していると報じられています。

強い殺意を抱いた理由が、この「宗教団体」にあるとすれば、二度とこうした痛ましい事件が起こらないために、ぜひともお伝えしておきたいことがあります。

7月11日午後、「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)が都内ホテルで会見を開き、山上容疑者の母親が「統一教会」の信者であったことを明らかにしました。

母親は1990年代に信者として所属していました。実は、筆者(57歳)も、1987年から約10年間「中の人」でしたので、活動時期が一部かぶります(面識はない)。

筆者は大学4年生の頃に、友人を通じて統一教会であることを告げられないままに、自己啓発セミナーに誘われました。それをきっかけに、就職などの先行きの不安を煽られるような形でしだいに思想を植え付けられ、入信することになりました。

「宗教団体である」という正体を隠した手法で誘われて、この自己啓発のサークルが、実は「統一教会」と知らされた時には、もはや入信せざるを得ない状況でした。だまし討ちに遭ったような形で、信者として長きにわたり、心と体をからめ捕られた時期があるのです。

この団体は、韓国人である文鮮明氏を教組として創設されました。1980年代には霊感商法事件などが全国で起きて、大きな社会問題にもなりました。また1992年8月25日に、韓国で行われた教組によって伴侶を決めて行われる合同結婚式には、歌手の桜田淳子氏も参加するなど、世の中を大いに騒がせました。

そうした騒動から、時間が流れた今、なぜ凶悪な事件が起こってしまったのでしょうか。

その背景について、筆者が一時期「中の人」だったこと、また、ジャーナリストとしてこれまで詐欺行為をするような危険な思想組織に多数潜入してきて、その状況を見聞きしてきた体験も踏まえてお伝えしたいと思います。

岸信介・安倍晋太郎&晋三は統一教会の広告塔なのか

90年代、教団の主催する集会やイベントには、多くの政治家が顔を出して、挨拶や演説をしていました。なかには、教組や組織の幹部らと堅い握手をかわす者もいました。20代だった筆者は、「政治家は次の選挙に向けての支持獲得のため、宗教団体を訪れるのだろう」と思っていました。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中