最新記事

資産形成

「日本だけが給料が上がらない問題」は「貯蓄好き」をやめる以外に解決策なし

TIME TO THINK ABOUT INVESTING

2022年4月15日(金)17時00分
酒井理恵(ライター)

株主優待狙いの投資も人気だが、必然的に個別株に投資することになり、投資先企業の株価が暴落すれば一度に大きく資産を減らす可能性も高い。

「余裕資金の範囲で行うなら構わないが、本来、投資は優待ではなく企業の成長性を見るべきだ」と、高岡は言う。加藤も「特別な理由がないのであれば、個別株のリスクを取る経済的合理性は少ない」と指摘する。

このほか、家賃収入や売却益を得る不動産投資や有事に強いとされる金投資も一長一短だが、ある程度まで投資に慣れて、十分な資産を形成してから挑戦したほうがいいだろう。

しかし、やみくもに投資を始めることがいいとは限らないと高岡は言う。まず、現在の1年間の収入に対する生活費の割合を整理することが必要だ。

金融庁の報告書「高齢社会における資産形成・管理」によれば、60代以上の支出は現役時代の2~3割減少する傾向にある。加えて、住宅ローンや子供の教育費、旅行費用など、人によって支出は異なる。

株式や投資信託の平均利回りは年3~10%といわれるが、希望する生活水準やもらえる年金・退職金、想定する物価水準などを考慮して設定すると、現実的に狙うべき数字が見えてくる。

「取りあえずためればいいというわけではない。老後に必要な資産を計画的に残すことで今の生活に使えるお金が分かり、人生を楽しむことが本来の目的だ」と、高岡は言う。

日本で働く人の大半は会社員だが、会社員は労働者にほかならず、たとえ一流企業に就職できても労働からは解放されない。経済的に豊かになるために、これからは「資本家になる」という思考が求められる。

経済的独立と早期退職を目標とする近年話題のライフスタイル「FIRE」も、言い換えれば資本家を目指すことだ。提供した資本により会社が成長して株価が上昇し、資本家は実業家と共に資産を増やすことができる――。

そう考えれば、極端にリスクを恐れたり、短期的な株価の変動に振り回されたりすることはなくなるはずだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

IBM、コンフルエントを110億ドルで買収 AI需

ワールド

EU9カ国、「欧州製品の優先採用」に慎重姿勢 加盟

ビジネス

米ネクステラ、グーグルやメタと提携強化 電力需要増

ワールド

英仏独首脳、ゼレンスキー氏と会談 「重要局面」での
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中