最新記事

感染症対策

入院できないコロナ自宅療養者が急増 重症化を察知するパルスオキシメーターは必須アイテムだ

2021年1月17日(日)13時10分
筒井 冨美(フリーランス麻酔科医、医学博士) *PRESIDENT Onlineからの転載

コロナで注目「ハッピーハイポキシア(幸せな低酸素血症)」とは?

健康な成人が急に酸素飽和度が90%以下になるような低酸素血症に陥ると、通常は強い呼吸困難感に苦しめられる。医大生の実習でパルスオキシメーターを装着した後に「酸素飽和度が90%になるまで息を止めて」と指示しても、9割以上の学生は苦しくなって脱落してしまう。

ところがコロナ肺炎では、ウイルス感染によって酸素飽和度が70~80%のような重度の低酸素血症の状態になったにもかかわらず、患者が「息が苦しい」と訴えないことがある。そのため重症化の発見が遅れることが問題となっている。

この現象を科学雑誌『サイエンス』が「ハッピーハイポキシア(happy hypoxia:幸せな低酸素血症)」と呼んだことで世界中の医療関係者に知られることになった。

日本でも「自宅療養していたコロナ軽症者に医療機関が電話で容体を確認しても特別な訴えがなかったので特に警戒していなかったところ、その後に急変して死亡」というケースが報道されている。その陰には、ハッピーハイポキシアがあった可能性が指摘されている。

1000円未満のパルスオキシメーターも登場

「パルスオキシメーターは医学機器であり、安くても数万~数十万円」というのが2019年までの常識だった。ところが、コロナ禍で医療機器の製造開発が急速に進み、2021年正月にネット通販を検索すると医療機器認証を受けた製品でも数千円、アジア製の廉価版ならば数百円の製品が販売されている。数十グラムのポケットサイズが数多く販売されており、持ち運びも簡単である。筆者としては、医療機器認証を受けた製品をお勧めしたい。

測定方法もクリップのような機器で指を挟んで数秒待って、モニターに表示された数字(酸素飽和度と心拍数の2つが表示される)を読むだけであり、高齢者でも簡単にマスターできるだろう。離れて暮らす親へのプレゼントとしてもよいアイデアだろう。また、親から電話で健康相談された時も数値や変化を参考にすることができる。

家族に発熱患者が発生した場合、地域によってはパルスオキシメーターを貸し出しする施設もあるが、数に限りがある。よって、身内に高齢者や糖尿病患者がいるならあらかじめネット通販や家電量販店などで入手するといいのではないか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中