最新記事

中南米

ベネズエラのクーデター未遂はマドゥロ政権によるやらせ説

2020年5月12日(火)18時30分
エイミー・マッキノン

事件について会見で語るタレク・ウィリアム・サーブ検事総長(今月8日、首都カラカス) Manaure Quintero-REUTERS

<「主たる任務はベネズエラの解放とマドゥロの身柄拘束だった」と逮捕された米軍特殊部隊出身の首謀者は語ったが......>

ベネズエラで5月4日、マドゥロ大統領打倒を図った容疑で拘束された13人の中に、2人の元米軍特殊部隊兵士が含まれていた。この政権転覆作戦を仕組んだとされるのが、フロリダの民間警備会社シルバーコープ。同社は首都カラカスへの侵入作戦の模様をツイッターで実況していた。

「コロンビア国境からカラカス中心部に向けて大胆な急襲作戦を開始」と、創設者のジョーダン・ガウドローは3日の動画で語っていた。

だが動画が投稿された時点で、8人の工作員がベネズエラ軍に迎撃され、殺害されていた。4日には別働隊のボートも拿捕された。

どうやらベネズエラ当局は既に計画を察知していたようだ。AP通信も攻撃3日前の時点で、作戦の詳細を報道していた。

マドゥロにとって、このクーデター未遂事件はプロパガンダに利用できる絶好のネタだろう。逆に野党指導者のフアン・グアイド国会議長にとっては最悪の展開だ。グアイドはアメリカを含む60カ国から、ベネズエラの正当な指導者として承認されている。

米軍特殊部隊出身のガウドローは、作戦の首謀者だったことを認め、「主たる任務はベネズエラの解放とマドゥロの身柄拘束だったが、失敗に終わった」とブルームバーグ通信に語った。

シルバーコープのウェブサイトによれば、同社の設立は2018年。50カ国以上の政府と企業に危機管理サービスを提供している。トランプ米大統領の集会でも警備を請け負っているが、トランプはクーデター未遂事件への米政府の関与を否定した。

グアイド側がマドゥロ打倒を依頼?

グアイド率いるベネズエラの野党勢力も、シルバーコープとの関係を否定している。だが、ベネズエラ人政治コンサンルタントのJ・J・レンドンは、グアイドからマドゥロ打倒のための選択肢を探るよう依頼されたと、ワシントン・ポスト紙に語った。

それによると、ベネズエラの野党勢力は2019年10月、シルバーコープとの間で2億1300万ドルの契約を結んだ。契約書にはグアイドの署名があるが、野党側は偽造の疑いがあると主張している。

「グアイドの代理人は複数の民間警備会社に接触したが、なかには5億ドルもの高額な報酬を要求するところもあった。予算的にガウドローが最適だったということだ」と、アメリカの非政府組織ラテンアメリカ・ワシントン事務所のジェフ・ラムジーは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBの9月利下げ観測高まる、5月CPIで物価圧力

ビジネス

米CPI、5月は前年比3.3%上昇 予想下回る 前

ワールド

中国で記録的高温、アジア各国が猛暑に警戒

ビジネス

ECB利下げ、「極めて緩慢」に進める必要=デギンド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「勝手にやせていく体」をつくる方法

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 5

    謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わな…

  • 6

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 7

    バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 9

    たった1日10分の筋トレが人生を変える...大人になっ…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 10

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中