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米中激突:ウイルス発生源「武漢研究所説」めぐり

2020年5月8日(金)11時09分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新型ウイルス肺炎の流行について会見するトランプ大統領(3月20日) Jonathan Ernst-REUTERS

トランプが「証拠を見た」として中国の責任を追及し中国が猛反発している中、CNNは「米同盟国諜報もトランプ説を否定」と報道し、BBCは武漢研究所へのアメリカの過去の資金提供を暴露した。米中激論のゆくえは?

危ない賭けに出たトランプとポンペオ

アメリカのコロナ感染者数の爆発的な増加は目を覆うばかりだ。感染者数は122万人を超え(アメリカ東部時間5月6日時点で122万3419人)、死者数も7万2千人を超えている。心が痛むのはその増加率(増え方)が未だに大きいことだ(参照:外務省データ)。

1月31日のコラム<習近平とWHO事務局長の「仲」が人類に危機をもたらす>に書いたように、人類を破滅の危機に追いやっているのが習近平(国家主席)であり習近平に忖度をしたWHO事務局長のテドロスであることは論を俟(ま)たない。1月23日にWHOは習近平のために緊急事態宣言を延期し、1月30日になってようやく発布しても肝心の「中国への渡航と貿易を禁止する」という条件を付けないとして緊急事態宣言を骨抜きにした。その結果、ウイルスを持った中国人が全世界に散らばっていったのだから、その罪は償えないほどに重い。コロナが一段落したら、人類の全てが習近平の責任を問わなければならないのは明らかである。

この理由だけで十分なのに、トランプ(大統領)はウイルスの発生源が「武漢ウイルス研究所だ」と言い出し、ポンペオ(国務長官)も5月3日にテレビで「膨大な証拠がある」と断言したため、トランプもまた「証拠を見た」「証拠はたくさんある」と言ってしまった。

これだけの犠牲者を出せば、そう言いたくなる気持ちは分かる。人類すべてが怒っていると言っても過言ではない。

しかしそれでも中国の責任を追及するに当たり、ウイルスの発生源を持ち出してしまうのは危険だ。万一にも科学的に否定されてしまったらトランプ政権の敗けになる危険性を孕んでいる。アフターコロナでの米中のパワーバランスに影響をもたらすので、慎重に発言してほしかったと個人的には思う。

トランプ説を否定する論拠を披露したCNN

懸念はつぎつぎと現実になりつつある。

5月4日、アメリカのCNNは"Intel shared among US allies indicates virus outbreak more likely came from market, not a Chinese lab"というタイトルの記事を発表した。日本語で書けば「アメリカの同盟国(ファイブアイズ)は、ウイルスのアウトブレーク(爆発的流行)は中国の研究室からではなく、市場(いちば)から来た可能性が高いという認識を共有した」となる。

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