最新記事

感染症

中国で謎のウイルス性肺炎が流行、SARSでないなら何か?

Mystery Viral Infection in China Has Experts Baffled As SARS Ruled Out

2020年1月7日(火)17時55分
カシュミラ・ガンダー

武漢の有名な楼閣、黄鶴楼の人混み(2017年10月) iStock.

<SARSの再来か、という噂は当局が否定した。だとすれば新型の感染症か?>

中国の衛生当局は、湖北省武漢市で昨年12月中旬~年末にかけて数十人が感染したとみられる謎の肺炎について、原因の特定に当たっている。

湖北省の省都で人口1900万人の武漢市では、少なくとも59人が肺炎を発症したとみられている。武漢市の1月6日の声明によれば、最初の症例が報告されたのは12月中旬。同市の衛生当局によれば、患者は全員隔離されている。うち重症者は7人で、死者は出ていない。

武漢市はすでに多くの感染源を排除している。SARS(重症急性呼吸器症候群)もその1つだ。原因はSARSではないかという憶測は、ネットから紙メディアに拡散している。SARSは死に至ることもある肺炎で、2002年と2004年に中国で大流行した。2002年の流行時には、感染者数は8098人に上り、774人が死亡した。

衛生当局の発表によると、「インフルエンザや鳥インフルエンザ、アデノウィルス、非定型肺炎(ここではSARSのこと)、中東呼吸器症候群(MERS)といった呼吸器病原体の可能性は排除」されており、引き続き病原体の特定に取り組んでいる。

当局の発表によると、1人目の患者は2019年12月12日に発症し、最も新しい患者は12月29日に発症した。さらに163人が患者と接触したと考えられており、経過観察が行われている。

<参考記事>中国で2人がペスト感染でパニック、不安訴えるSNSは削除され......

動物と関係か?

WHO世界(世界保健機関)が1月5日に発表した声明によると、WHOの中国オフィスが今回の肺炎について最初に報告を受けたのは12月31日。患者のなかには、武漢市にある華南海鮮市場の従業員が複数いたため、市場は1月1日に閉鎖され、消毒・殺菌が行われた。

WHOは1月1日、今回のウィルスが持つ潜在的リスクを評価するため、中国当局に情報提供を要請した。現時点ではまだ、今回の「原因不明の肺炎の集団発症」がもたらす総合的リスクを見きわめるには情報不足だという。「WHOは事態を注意深く監視しており、中国当局と緊密に連携している」

<参考記事>パンデミックが世界を襲ったとき、文明再建の場所として最適な島国は?

中国政府によれば、今回のウィルスが人から人へ明らかに感染した証拠は見つかっておらず、医療従事者への感染ケースもない。

「海鮮市場ならびに家畜市場と(肺炎)との関連性が報告されていることから、動物が関与した可能性もある。患者の症状は、いくつかの呼吸器疾患で一般的なもの。冬はもともと肺炎が多い。しかし、入院を要するまで肺炎を悪化させた患者が44人にのぼり、地理的にも時期的にも集中して発生しているので、慎重に対応すべきだ」と、WHOは述べる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア軍の上陸艇を撃破...夜間攻撃の一部始終

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中