最新記事

顔認証

Google 「Pixel 4」の顔認証用データ、街で声をかけ5ドルで集めていた

2019年7月31日(水)18時20分
佐藤由紀子

Google 「Pixel 4」顔認証用データは、「足で稼いだ」ものだった...... Google Pixel 4

<Googleの今秋発売予定のスマホ「Pixel 4」で、ロック解除方法として顔認証を採用されるが、開発のためのデータは意外な方法で集められていた......>

Googleが、この秋に発売予定のオリジナルスマートフォン「Pixel 4」で、ロック解除方法として初めて顔認証を採用する。

AppleがiPhoneのロック解除に顔認証の「Face ID」を採用したのは、2017年発売の「iPhone X」からだ。それ以降iPhoneの新モデルは毎年、「Face ID」搭載になっている。

顔認証は、大まかに説明すると、それまで一般的になっていた指紋認証の代わりに、スマートフォンなどに顔を向けることで、本人であると認証させる機能。iPhoneの場合は、ロック解除やApple Payの実行に使う。

Appleは世界中の、性別、年齢、民族......10億点画像を使った

AppleはFace ID採用に当たり、開発のためのデータセットに偏りがないよう「世界中の、性別、年齢、民族、その他のカテゴリーを代表する人々に協力を求め、10億点以上の画像をデータセットとして使った」と、「Face ID Security」という文書で説明している。

データセットに偏りがあると、人種や肌の色によって、認証がうまくいかないケースが出てくる可能性がある。例えばMITメディアラボで研究者の顔データを使ってトレーニングした顔認証システムは、黒人女性の顔を認識できなかったと、MITメディアラボの研究者、ジョイ・ブオラムウィニ氏が2016年、TEDで語った。メディアラボの研究者は白人の男性が多いため、非白人の女性の認証を失敗したということだった。

Googleの従業員だと名乗る人物から顔データ提供を求められた......

Googleはかつて、顔認証で大きな失敗をしている。同社のAI採用写真アプリ「Googleフォト」が、AIによる自動タグ付けで、黒人の女性の写真に「ゴリラ」というタグを付けてしまったのだ。

そんなGoogleがPixel 4での顔認証システム採用に当たってとった対策は、データセットのための顔データを"足でかせぐ"ことだった。

5月ごろから、Googleの従業員だと名乗る人から顔データ提供を求められたという体験談が出始めていた。ZDNetによると、協力することに合意すると、改造されたPixelを手渡され、約5分間手や顔の動きを収集されたという。協力すると、5ドル(約540円)分のAmazonあるいはスターバックスのギフト券をもらえる。

かなり泥臭い方法だが、人種や肌の色、性別を実際に目で確認した上で声を掛けるというのは、確実な方法とも言える。

最先端のIT企業がやることとしては意外かもしれない。だが、同社のGoogleマップの特徴である「ストリートビュー」は、実際にカメラで道路の写真を撮ることで構築している。これもかなり泥臭い方法だ。Googleが何人の協力者のデータを集めたかは不明だが、一度決めたら力技も発揮するGoogleの特徴が出た例かもしれない。今回、「Pixel 4」のロック解除方法として採用された顔認証だが、今後、Googleがどういう展開をするか楽しみでもある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム、26年は10%成長目標に 外的圧力でも勢

ワールド

高市氏に1回目から投票、閣外協力「逃げ」でない=維

ビジネス

中国GDP、第3四半期は前年比+4.8% 1年ぶり

ワールド

トランプ氏「大規模」関税続くとインドに警告、ロ産原
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 6
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 9
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中