最新記事

朝鮮半島

「武力行使も辞さない」と北朝鮮がアメリカを脅しても、第3回米朝首脳会談は実現可能と文在寅

North Korea Warns to ‘Pull’ the ‘Trigger’ on U.S.

2019年6月27日(木)16時25分
トム・オコナー

トランプ大統領からの親書を読む金正恩(6月22日にKCNAが公開) KCNA via REUTERS

<問題は、金正恩はすでに韓国ではなく、ロシアと中国に頼りはじめているということだ>

北朝鮮がアメリカに新たな警告を発した。核協議の手詰まりを打開するため3回目の米朝首脳会談の開催が取り沙汰されるなか、非核化を求めて引き続き北朝鮮を非難するアメリカに抗議する内容だ。

国営通信社・朝鮮中央通信(KCNA)は6月26日、北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)とドナルド・トランプ米大統領が前例のないハイレベルの接触を行なっている最中に、「これまで以上にあからさまに、わが国に敵対するアメリカの異常な動き」に抗議する記事を掲載した。「異常な動き」とは、米国務省の2019年版「人身取引報告書」と2018年版「国際信教の自由報告書」で北朝鮮の人権侵害が批判されたことと、北朝鮮の核開発の脅威に備える国家非常事態宣言が延長されたことだ。

KCNAはまた、マイク・ポンペオ米国務長官が6月23日の記者会見で「北朝鮮経済のざっと80%は制裁下にある」と述べたことを「無謀な発言」と非難。「問題はアメリカの目標がこれを100%に引き上げることかどうかだ」として、もしそうなら、その背後には「制裁と圧力でわれわれを跪かせようとするアメリカの見果てぬ夢」がある、と断じた。

「わが国はアメリカの制裁に屈服するような国ではないし、アメリカがいつでも気の向いたときに攻撃できる国でもない。わが国の主権と存続の権利を踏みにじろうとする者がいたら、われわれは躊躇なく自衛のために武力を行使する」

互いを褒めたたえる仲

北朝鮮の国営メディアが激烈な論説を載せるのは今に始まったことではない。だがトランプと金正恩が口撃の矛を収め、2018年6月に史上初の米朝首脳会談を行ってからは、仮借ない対米批判は鳴りを潜めていた。首脳会談を皮切りに、建前上とはいえ、制裁の緩和や体制保障と引き換えに、北朝鮮の非核化を目指す一連の交渉が始まったからだ。

だがこの1年間、交渉には見るべき進展がない。今年2月末にベトナムの首都ハノイで開催された2回目の首脳会談は物別れに終わり、協議頓挫の責任を米朝が互いになすり付け合うようになった。

米朝両政府は交渉で一切譲歩しないと宣言しているが、トランプと金正恩はそれをよそに、互いを褒めたたえる親書を交わすなど、相変わらず蜜月ぶりをアピールしている。6月14日に74歳の誕生日を迎えたトランプは、その10日後にホワイトハウスで行なった記者会見で、金正恩から「とても個人的で、とても温かく、とても感じの良い」誕生日祝いの手紙をもらったと明かした。一方KCNAの6月23日の報道によると、金もトランプから「素晴らしい内容」の親書を受け取ったという。

KCNAによると、金は「トランプ大統領の政治的判断能力と並外れた勇気を認め、興味深い内容を真摯に検討する」と述べたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 5

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 6

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 9

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中