最新記事

韓国ファクトチェック

「韓国にまともな民主主義はない」アメリカも抱く誤った韓国観

AN ALLY, NOT A PUPPET

2019年3月18日(月)14時55分
ネーサン・パク(弁護士)

ワシントンには、冷戦の最中、1970年代の韓国の政治状況が今も続いていると思い込んでいるアナリストがあまりに多い。彼らに言わせれば、韓国にはまともに機能する民主主義は存在せず、ただ右と左の独裁政権の交代があるだけだ。右派の独裁政権は(腐敗に目をつぶってでも)アメリカが庇護すべきだが、左派の独裁政権は北の共産主義者にすぐにでも国を売り渡しかねないから要注意だ――彼らはそう考えている。

ワシントンでは疑いの目で見られている文政権の南北融和路線も、韓国国内では幅広い支持を得ている。文の支持率は政権発足当初と比べて一時は大幅に低下したが、今年初めには50%を超えるまでに回復した。南北融和の進展が評価されたからだ。

米政府の対韓外交の枠組みは間違っているだけではない。韓国の人々は1987年に自分たちの手で勝ち取った民主主義を守るため、2017年にも闘った。その苦闘を無視した枠組みだ。

韓国の保守派と米政界にいる彼らの味方は派手なプロパガンダを展開しているが、事実は揺るがない。文政権はどこの国にでもある中道左派政権であり、最低賃金の引き上げなど穏健左派の政策を実施する一方で、大企業寄りの姿勢をおおむね維持している。

韓国は急速に変わりつつある。もはやアメリカの事実上の属国ではない。経済大国の仲間入りも果たし、アメリカにとっては外交戦略上の最重点地域における同盟国だ。韓国のリベラル派指導者に対する米側の根拠のない警戒心は重要な同盟関係を危うくする。

(筆者はワシントンで活動する弁護士でメディアに韓国政治の解説を寄稿)

From Foreign Policy Magazine

<2019年3月12日号掲載>

【関連記事】自殺者数、米軍兵力、初任給... 韓国のリアルを10の数字から知る
【関連記事】日本の重要性を見失った韓国

※3月12日号は「韓国ファクトチェック」特集。文政権は反日で支持率を上げている/韓国は日本経済に依存している/韓国軍は弱い/リベラル政権が終われば反日も終わる/韓国人は日本が嫌い......。日韓関係悪化に伴い議論が噴出しているが、日本人の韓国認識は実は間違いだらけ。事態の打開には、データに基づいた「ファクトチェック」がまずは必要だ――。木村 幹・神戸大学大学院国際協力研究科教授が寄稿。

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中