最新記事

アジア

ミャンマー仏教徒武装集団が警官9人殺害、兵士9人拘束か スー・チー、紛争泥沼化に苦慮

2019年3月14日(木)12時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ミャンマー西部ラカイン州で自治権拡大を求める仏教徒武装勢力「アラカン軍(AA)」の軍事訓練所のようす  Radio Free Asia - YoutTube

<イスラム系少数民族ロヒンギャ族への弾圧で世界的に批判を受けたミャンマー。そのロヒンギャ族も住むラカイン州には、独立を求める武装勢力が複数存在し、ミャンマーの民主化にも影を落としている>

ミャンマー西部ラカイン州で自治権拡大を求める仏教徒武装勢力「アラカン軍(AA)」と国軍による戦闘が激化している。3月9日には国軍の戦略拠点を巡る攻防戦が勃発、国軍兵士9人がAAの捕虜となり、多数の武器弾薬、工作機械、ドローンなどを奪われたほか、10日には同州の警察駐在所4か所がAA部隊によって襲撃され、警察官9人が死亡、2人が負傷したことなどが明らかになった。

これはAAの広報担当キン・トゥカ氏が3月12日に米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」に対して明らかにしたもので、同州で政府軍とAAによる戦闘がかなり激化していることを示している。

AAによると、3月9日にラカイン州ピーチャウン地区のピャン・ソ村から約5.5キロ離れた戦略上の要所に展開していた国軍が、AA部隊に対して重火器を使用して攻撃。双方が激戦を展開した末、国軍側が後退したという。

AAは国軍兵士9人を捕虜として拘束するとともに工作機械のユンボ(油圧ショベル)16台、トラック1台、パソコン3台、ドローン1機、小火器・重火器などの武器を押収したという。

AAはRFAに対して「9人の国軍捕虜はきちんとした待遇を受けており、今後どうするかは上級司令部の指令待ちである」と述べ、虐待や暴行は行っていないことを明らかにしている。

もっともピャン・ソ村などの住民は「兵士が捕虜になったらわれわれの耳にも入るはずで、そうしたことは聞いていないので間違いかフェイクニュースではないか」と話しているということで、最終的な確認は取れていない。

ただAAは「捕虜にした兵士はラカイン州ゴワに駐屯する陸軍第563軽歩兵大隊所属の兵士だ」と具体的に所属を明らかにしていることから、信ぴょう性はあるとの見方も広がっている。

RFAが国軍に情報の確認を求めているが、具体的な回答はない状況という。

一方、翌10日にはAAによってラカイン州北部のヨータヨクやポンアクウン町区にある警察官駐在所4か所が襲撃され、銃撃戦の末、警察官9人が殺害され、2人が負傷する事件も発生した。

AAは小規模で警察官が比較的少ない駐在所を襲撃対象として狙ったものとみられており、そのため襲撃による警察官の被害が大きくなったものとみられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾、次期総統就任後の中国軍事演習を警戒 治安当局

ワールド

中国、大気汚染改善目標が半数の都市で未達 経済優先

ワールド

AUKUS、韓国とも連携協議 米英豪の安保枠組み

ワールド

トランプ氏、不法移民送還に向けた収容所建設を否定せ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 8

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 9

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 10

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中