最新記事

金正男暗殺事件

マレーシア、北朝鮮との国交再開へ マハティール首相が決断する狙いは?

2018年6月29日(金)12時39分
大塚智彦(PanAsiaNews)

マレーシアの地に再び北朝鮮国旗が翻る日は近い? Athit Perawongmetha-REUTERS

<わずか1年前、北朝鮮は金正恩の異母兄弟である金正恩を暗殺したとしてマレーシアと対立、事実上の国交断絶になったが──>

2017年2月13日、クアラルンプール国際空港で北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄にあたる金正男氏が顔面に猛毒のVXを塗りつけられて「暗殺」された。この衝撃的な事件の実行犯で殺人罪に問われている女性2人の被告の公判がマレーシアの高等裁判所で6月28日開かれた。

検察側は2人の犯行には殺意が認められるとして殺人罪が立証可能との意見書を裁判官に提出した。マレーシアでは殺人罪で有罪となれば死刑が適用されるため、この日の公判は事実上の「死刑の求刑」となった。一方の被告弁護側は「2人はテレビのいたずら番組撮影と信じており、殺意はなかった」として無罪を訴え続けている。

この裁判では事件に深く関与したとされながらマレーシアを出国した北朝鮮国籍の容疑者、重要参考人らの訴追は事実上不可能であることからベトナム人のドアン・ティ・フォン被告(30)、インドネシア人のシティ・アイシャ被告(26)の両被告が「スケープゴートとして処断される」との見方が高まっている。
高裁は次回8月16日の公判で「無罪か裁判継続か」の判断を示す。

こうした中、マレーシアのマハティール首相は外交関係が途絶している北朝鮮との関係を改善するためにピョンヤンのマレーシア大使館を再開し、国交を正常化させる意向であることを明らかにした。

金正男氏殺害事件の黒幕として手配した北朝鮮籍の男性らが警察当局の出頭要請に応じず北朝鮮大使館に「籠城」、マレーシア政府が政治的駆け引きで国外出国に合意した経緯がある。当時ナジブ政権は合意しながらも外交関係の中断を決め、両国はそれぞれの大使館員を召喚した結果、実質上の国交断絶状態がそれ以来続いていた。


金正男暗殺事件は国際社会を揺るがした事件だったが...... The Star Online / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

グローバル化の減速、将来的にインフレを刺激=ECB

ビジネス

英中銀が金利据え置き、総裁「正しい方向」 6月利下

ビジネス

FRB「市場との対話」、専門家は高評価 国民の信頼

ワールド

ロシア戦術核兵器の演習計画、プーチン氏「異例ではな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 3

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 4

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 5

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「高齢者は粗食にしたほうがよい」は大間違い、肉を…

  • 10

    総選挙大勝、それでも韓国進歩派に走る深い断層線

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 9

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中