最新記事

貿易

トランプ政権、洗濯機と太陽パネルのセーフガード発動 アジア・欧州で反発高まる

2018年1月24日(水)09時31分

1月23日、トランプ米大統領は洗濯機と太陽光パネルに輸入関税をかける大統領令に署名した。 米通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)発動はトランプ政権で初めてとなる。 写真は同日、ホワイトハウスでセーフガード措置発動の大統領令に署名するトランプ大統領(2018年 ロイター Jonathan Ernst)

トランプ米大統領は23日、洗濯機と太陽光パネルに輸入関税をかける大統領令に署名した。

米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は前日の声明で、トランプ大統領が家庭用大型洗濯機のほか、太陽電池および太陽電池モジュールに対し、輸入を制限するための関税を課すことを承認したと明らかにしていた。米通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)発動はトランプ政権で初めてとなる。

こうした措置に対し中国と韓国などから批判が相次いでいるが、トランプ大統領はこれにより通商戦争が引き起こされるわけではないとし、「雇用が回復し、われわれは自分たちの製品を自ら製造することになる。こうしたことは長らくなかった」と述べた。

米国のセーフガード措置発動に対し、欧州からも批判の声が上がっている。欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は遺憾の意を示したうえで、世界貿易機関(WTO)規定に違反していないか深刻な疑念があるとし、EU加盟国の輸出が影響を受けた場合は躊躇なく対応するとの姿勢を示した。

このほかドイツのアルトマイヤー財務相代行はブリュッセルで記者団に対し、EUは保護主義に反対するとしたうえで、こうした措置により米国民が高い価格での購入を余儀なくされるとの考えを示した。

トランプ大統領の就任1年目の通商政策は想定されたほど懸念を呼び起こすものではなかったが、オックスフォード・エコノミクス(香港)のアジア経済部門責任者、ルイス・クイジス氏はこうした状況に変化が見られる可能性があると指摘。トランプ政権が鉄鋼やアルミニウムなども視野に入れていることを踏まえると「今回の措置は今後続く措置の第1弾でしかない可能性がある」と述べた。ただ、エコノミストの間では米政権は米企業の世界的な供給網に影響が及ぶような措置は避けるとの見方がなお大勢となっている。

洗濯機に対する輸入関税の発動は韓国のサムスン電子<005930.KS>とLG電子<066570.KS>に対する大きな打撃となる。両社は年間合わせて250万─300万台の洗濯機を米国に輸出。売上高は約10億ドルで、米洗濯機市場の約4分の1を握っている。

韓国の梨花女子大学校の国際通商法専門家、Choi Won-mog氏は「トランプ政権では安全保障と通商は一体化している」と指摘。一部韓国のアナリストの間ではトランプ政権は韓国との2国間自由貿易協定(FTA)の再交渉で主導権を握りながら、北朝鮮問題で韓国が米国に対する依存を深めるよう韓国に対し圧力を高めているのではないかとの見方も出ている。

米国の輸入関税措置に対し、サムスン電子とLG電子も懸念を表明。結果的には米国の消費者や米国の雇用が影響を受けるとしている。



[ワシントン/ソウル/北京 23日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ANAHD、今期18%の営業減益予想 売上高は過去

ワールド

中国主席「中米はパートナーであるべき」、米国務長官

ビジネス

中国、自動車下取りに補助金 需要喚起へ

ビジネス

円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 8

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中