最新記事

日本社会

人口減の漁師町に募る北朝鮮ミサイル不安 「逃げる場所もない」

2017年10月19日(木)19時00分


憲法改正、分かれる意見

えりも町の有権者の間でも自民党が掲げる憲法改正についての意見は割れている。神主の手塚裕警さん(39)は憲法は時代遅れなので「今の時代に合った憲法が必要だ」とする。

一方、内藤叔廣さん(77)は反対の意見だ。「私は(改正は)必要ないと思う。日本は戦争しないということなんだから」と指摘する。安倍自民は強くなりすぎているとして、衆院選では野党に投票する予定だ。

えりも町によると、最近のミサイル発射を受けて特段の予防措置や避難訓練などは行っていない。町内には津波や台風警報を報じるスピーカーが50箇所に設置されている。最近数カ月の間には屋内にいても警報が聞こえるように1500戸の家庭に無線装置を設置したという。

えりも町は緊急の食料や水も配備している。北海道の他の地域との交通が海岸沿いの道路に限られており、天候により交通が遮断されることがあるからだ。

えりも町の町民はサケの漁獲高減少と高齢化による後継者不足で漁業が衰退するのを懸念している。「ここは漁業の町。魚がとれないとだめな町です」と内藤さんは指摘する。漁業以外に有望な職業は少ないため若者は札幌など都会に出て行いき、両親も子供につれそうかたちで地元を離れていくこともある。えりもの人口は1960年代の9000人がピークで、今は半減した。

えりもの漁業関係者たちは北朝鮮が警告どおりに太平洋で水爆実験を行うようなことがあれば、福島第一原発事故のように海が放射能で汚染されると恐れている。「放射能で魚が全部だめになってしまう。福島のようになってしまうんじゃないか。商売にならない」とナリタさんは言う。

(マルコム・フォスター 翻訳 竹本能文 取材協力 久保信博 日本語編集 石田仁志)

[東京 19日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、利下げ急がず 緩和終了との主張も=10月理

ワールド

米ウ協議の和平案、合意の基礎も ウ軍撤退なければ戦

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中