最新記事

米軍事

トランプ政権、米国製軍用ドローン輸出増狙う 国際的な規制緩和へ

2017年10月16日(月)18時00分

最も強力な米国製ドローン販売の拡大を阻む大きなハードルは、ミサイル売却などを規制するため、米国のほか34カ国が署名し1987年に発足した協定「ミサイル技術管理レジーム(MTCR)」だ。

同協定は、航続距離300キロ以上、最大積載量500キロ超のドローンを巡航ミサイルに分類しており、極めて厳格な輸出入規制を義務付けている。したがって、米国製品の輸出規制を緩和することに国際的な承認を得るためには、MTCRの再交渉が不可欠となる。

ある米当局者と業界筋によれば、アイルランドの首都ダブリンで来週開催されるMTCRの年次総会に出席する米国務省当局者は、MTCR発足当時には存在しなかったドローン販売について、ミサイル技術よりも寛大に扱うことを提案する「ディスカッションペーパー」を発表する予定だという。

合意が得られるという保証は全くない。NATO加盟国と国境を接するロシアはそのような変更に抵抗する可能性があると、この米当局者は語った。

中国とイスラエル

MTCRに参加していない中国は、イラクやサウジアラビア、ナイジェリアといった米国と近い関係にある一部の国々に向けドローン販売を推進しようとしているが、米国の規制網に阻まれている。

中国製ドローン「彩虹3号」や「彩虹4号」は米国のリーパーと比較されるが、もっと安価だ。中国は自国製ドローンをほぼ無条件で売っていると、複数の米当局者は言う。

中国外務省は、軍用ドローンの輸出に関して「慎重かつ責任ある態度」で臨んでいると主張している。

一方、MTCRに参加してはいないものの、順守するとしているイスラエルは、その技術力の高さから、米国メーカーの競合相手となっている。しかし、不安定な状況にある中東の近隣諸国には販売しないとしている。イスラエル国防省のデータによると、同国は2016年に5億2500万ドル規模のドローンを輸出した。

米ドローンメーカーや政権内部の擁護派は、他国がドローンの販売拡大に向けて急速に動くなか、後れを取るべきではないと主張している。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

Matt Spetalnick and Mike Stone

[ワシントン 11日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

鈴木財務相「財政圧迫する可能性」、市場動向注視と日

ワールド

UCLAの親パレスチナ派襲撃事件で初の逮捕者、18

ワールド

パプアニューギニアで大規模な地すべり、300人以上

ワールド

米、ウクライナに2.75億ドル追加軍事支援 「ハイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 2

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリン・クラークを自身と重ねるレブロン「自分もその道を歩いた」

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 5

    なぜ? 大胆なマタニティルックを次々披露するヘイリ…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    これ以上の「動員」は無理か...プーチン大統領、「現…

  • 8

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 9

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシ…

  • 10

    台湾の電車内で、男が「ナイフを振り回す」衝撃映像.…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中