最新記事

欧州

ドイツ極右政党躍進の意外すぎる立役者

2017年10月16日(月)11時45分
ポール・ホッケノス(ジャーナリスト)

そもそもワイデルがAfDに入党したのは、EUに疑問を抱いていたからだ。結成当時のAfDも、(移民ではなく)財政危機に陥ったギリシャなどの救済にドイツ人の税金を注ぎ込むことに反対していた。

AfDは14年に欧州議会で初めて議席を獲得。その翌年からはドイツの地方議会にもじわじわと進出し、今では16の連邦州のうち13州の議会で議席を得ている。支持基盤は、政治に無関心な一般市民や主流政党に愛想を尽かした人々だ。

ドイツは極右勢力の存在にとりわけ敏感だった。そんな国でAfDが成功できたのは、ナチスの時代を懐かしむタイプの勢力とは手を組まず、代わりにワイデルのような人物を担いで、上品なポピュリズムのイメージを磨き上げたからだ。

反EU路線で突っ走っていたAfDの活動に変化が生じたのは15年。シリア内戦の激化で100万人近い難民がドイツに押し寄せた時期だった。

このときワイデルは反移民の流れに乗った。ドイツは「外国人犯罪者にとっての安全な港になった」と彼女は言い、とりわけイスラム系の犯罪者だと名指しした。ドイツから送還したそれら「犯罪者」たちを収監する刑務所を北アフリカに設置することや、罪を犯した移民の市民権を制限すること、ドイツを欧州人権裁判所から離脱させることも呼び掛けた。

穏健派でも不吉な存在

彼女はまた、ドイツ国内全域でイスラムの尖塔を禁止すべきだ、イスラム教徒の女性が公務中にヘッドスカーフを着用するのも禁止すべきだとも主張した。さらに現在の難民法(AfDは「ナチス時代の罪の過剰な補償の産物」と批判している)の廃止も訴えている。

こうした外国人嫌いの論調がポピュリスト政党の支持者に受けるのは当然だ。一方で(いかにもドイツらしいところだが)AfDの支持層は、必ずしもワイデルのような金融業界の人間を毛嫌いしない。むしろ労働者階級でも保守派のドイツ人の目には、銀行家は信頼できる人物と映るらしい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

景気一致指数3月は前月比1.3ポイント低下、4カ月

ワールド

中国レアアース輸出、4月は前月比-15.6% 輸出

ビジネス

NTT株主、分割効果で268万人に大幅増 20代以

ワールド

中国外務次官、米国との貿易問題管理に自信 「恐れは
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中