最新記事

座談会

中国政治ブロガーが指南する党大会の楽しみ方(もちろん人事予想付き)

2017年10月12日(木)19時33分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

UJC 私も陳の常務委員入りはないと思う。陳は浙江省で習近平の部下だったんですが、宣伝部門トップという役柄。プロパガンダ担当ですよ。いわば習近平を褒めたたえる仕事をこなして出世してきたわけで、茶坊主的キャラクターという印象。平時に2階級特進で常務委員入りを果たしたのは胡錦濤、朱鎔基、習近平、李克強という総書記、首相級ばかりです。陳が常務委員入りを果たすとすると、ポスト習近平の最右翼となるわけで、そこまでの器じゃないかな、と。

私の次期常務委員予想は「習近平、李克強、汪洋、栗戦書、韓正」の5人。実務派の汪洋、常務委員への出世ルートとされる上海市トップの韓正に加え、栗戦書という習近平の腹心中の腹心が入るという「習近平圧勝シナリオ」です。汪洋は団派(中国共産主義青年団=共青団出身の政治家派閥の意)。韓正は江沢民派でもあり共青団経験者でもあり習近平の部下でもあったという派閥横断型の典型なんですが、2人とも習近平に取り込まれたと見ています。

ポイントは「ポスト習近平を置かず、習が3期目を狙う布石」。ポスト習近平の候補だった孫政才、胡春華のうち、前者はすでに失脚してます。だったら後者の胡春華も外しちゃおう、と。常務委員入りすれば、次の総書記候補になっちゃいますからね。それで外す口実作りのために常務委員の定員も7人から5人に減らすんじゃないですかね。後継者を作らないでいて、次の5年の間に権力基盤をさらに強化。68歳定年を打破し、習近平3期15年を目指す下地を作ります。

水彩画 孫政才がやられた以上、私も胡春華は外されるかな、と。

団派は「架空の存在」、いや「確かに存在している」と2人が激論に

――団派潰しですね。

水彩画 うーん。日本メディアだとあたかも団派という派閥があるかのように報道されていますけど、本当に実在するんですかね? 私は報道の中だけに存在する架空の存在だと思っています。例えば先日、某新聞が「共青団トップの秦宜智が国家質量監督検験検疫総局副局長に転任した、共青団トップから閑職への移動は団派潰しだ」と報じてましたが、秦は2013年にチベット自治区ラサ市のトップから共青団に落下傘的に異動しただけ。それまでは共青団との関わりは一切ないんですわ。こんな経歴でも団派と言えるのか、不思議でしょうがないですね。

UJC 異議あり! 秦はともかくとして、鄧小平と胡耀邦元総書記が作った、共青団幹部が地方トップを経験した後に党中央の高官になるというレールは確かに存在しています。もちろん、本当に出世するには共青団に所属していた事実だけでは足りず、地方での実績を上げること、さらには保守的な長老たちに認められてその引き立てを受けるという、「実務能力と引き立ててくれる親分」が必要です。自民党の派閥みたいな分かりやすい所属ではなく、大企業で作られる派閥的なものと理解してはどうでしょう。このような理解を元にすれば、団派が存在しないとは言えないでしょう。

例えば、共青団トップ経験者の胡錦濤はチベット自治区党書記時代に天安門事件でいち早く戒厳令を出して速やかな弾圧をしたことが、鄧小平や陳雲ら長老に「胆力あるやんけ!」と認められて総書記候補に。また、北京市の党書記を最近退任した郭金龍は、チベット時代に胡錦濤の部下だったので団派と目されていますが、彼が出世ルートにのったのは四川省楽山市長時代に、視察に来た李鵬に能力を認められたためです。

あと汪洋。団派と言われていますが、元は安徽省の田舎の代理市長だったんです。南巡講和の途中に立ち寄った鄧小平がその才覚を認めて、安徽省の副省長に抜擢されてる。つまり汪洋の出世は団派だからではなく、鄧小平が見込んで胡錦濤に託したから。「最後の鄧小平人事」なんですよ!

(早口になりつつ)ことほどかように、団派というつながりはあっても、それと同時に長老に認められる爺さん転がしのテクニックが大事なわけでして。団派であっても出世するには長老に気に入られることがマスト。となったら団派というよりも保守派と言われてもしようがない部分もあります。でも団派同士のお付き合いは別にあるわけで。どっかひとつだけの派閥に入っていることにしたら分析が楽ですけど、現実とは全然違うわけですよ。複数のつながりを持っているわけですよ。そこが悩ましい。めんどくさい。でも面白い......(以下えんえん続く)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英外相がシリア訪問、人道援助や復興へ9450万ポン

ワールド

ガザで米国人援助スタッフ2人負傷、米政府がハマス非

ワールド

イラン最高指導者ハメネイ師、攻撃後初めて公の場に 

ワールド

ダライ・ラマ「130歳以上生きたい」、90歳誕生日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中