最新記事

座談会

中国政治ブロガーが指南する党大会の楽しみ方(もちろん人事予想付き)

2017年10月12日(木)19時33分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

――お土産だけではなく、中国本土に通信販売もされていましたね。ばれないように本のカバーだけ別の本に差し替えて郵送していました。銅鑼湾事件でも当局は郵送先のリストを入手するのが目的だったと報じられています。

水彩画 実は中国共産党の中の人が政治ゴシップ本を買っていたんじゃないかとはよく言われていますね(笑)。で、その話をあたかも自分の持ちネタのように日本メディアの記者に話す。日本メディアは「共産党関係筋によると~」と記事にする。情報ソースロンダリングが起きているんじゃないかと(笑)。

UJC ありえない話じゃないですね(笑)。故人ですが、某大手新聞の北京支局長を務められた記者の方にお聞きしたのですが、当時直接情報を聞けたのは中央候補委員が最高位だったそうです。共産党の指導者層とは常務委員、政治局委員、中央委員まで。中央候補委員は決定に関与する権限はないものの、会議に参加する権利、どういう討議が行われたかなどの議事録を見るオブザーバー的な権利があると言われています。

共産党の序列でいうと、だいたい200~400番目ぐらいです。いわゆる閣僚級、省長級の幹部。年々情報統制は強化されていますから、今はそのレベルですら直接聞くのはとても無理でしょう。その下のクラスの党官僚だと、自分とは異なる分野の重要事項については伝えられていないわけです。党中央で何が起きているのかについては、噂やらリークメディアやらを頼りにしているでしょうから。

――先日、現役の大手メディア中国駐在記者さんと意見交換したんですが、頭を抱えていました。「5年前の党大会では先輩記者ががんがん内部情報を報じていたけど、どうやって情報取っていたのかさっぱりわからん。本当に取材できていたの!?」と(笑)。記者にとって情報ソースは秘中の秘、同僚にも明かさないことが多いとなると、本当にちゃんとした情報だったのか、同僚からも疑いの眼で見られるという(笑)。

ポスト習近平だった「孫政才がやられた以上、胡春華も外される」で一致

――さて、10月18日から始まる今回の十九大では何が注目点なのでしょうか?

UJC 毎回そうですが、常務委員の顔ぶれがどうなるのかが最大の注目点です。中国共産党は「集団領導制」と言われてます。トップの総書記ばかりに注目が集まりますが、その総書記も中央政治局常務委員会では一票の投票権しか持たない。最高指導陣の合議制という形態です。この5年間で習近平総書記に権力が集中する改革が行われたとはいえ、いまだに常務委員の権力は絶大ですから。

水彩画 中国の床屋政談も主流は新たな常務委員の顔ぶれ予想ですよね。現在は習近平、李克強、張徳江、兪正声、劉雲山、王岐山、張高麗の7人。「七上八下」(党大会時点で満68歳以上は引退)という慣例に従えば、習近平と李克強以外の5人は引退です。

常務委員のワンランク下、政治局委員には、上述の常務委員に加えて馬凱、王滬寧、劉延東、劉奇葆、許其亮、孫春蘭、李建国、李源潮、汪洋、張春賢、範長龍孟建柱、趙楽際、胡春華、栗戦書、郭金龍、韓正の17人がいます。引退年齢を迎えた委員(太字で示した)以外の11人から5人が選ばれるというレースです。

――習近平のように中央委員から二階級特進で常務委員になるケースもありますね。

UJC そうですね。習近平に引き立てられてロケット出世を続けている陳敏爾が2階級特進する可能性のあるダークホースとして取り沙汰されてます。

水彩画 その可能性はないでしょ。陳は7月に重慶市党委員会書記に就任したばかり。重慶は薄熙来(元重慶市トップ、2012年に失脚)、孫政才(元重慶市トップ、2017年に失脚)とごたごたを起こしている地域。その平定に送り込まれた習近平の懐刀が陳です。就任の挨拶では「中央が私を重慶に送り混んだからには私は重慶の一員だ」と発言しました。重慶の改革に全力を尽くすと表明したのに、たった3カ月で異動したら拍子抜けです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

UBS、資本規制対応で米国移転検討 トランプ政権と

ビジネス

米オープンAI、マイクロソフト向け収益分配率を8%

ビジネス

中国新築住宅価格、8月も前月比-0.3% 需要低迷

ビジネス

中国不動産投資、1─8月は前年比12.9%減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中