最新記事

エネルギー

トランプ政権が海洋保護見直し 対象のエネルギー業界はありがた迷惑

2017年10月3日(火)11時45分

9月28日、米国のトランプ政権は、エネルギー開発を推進するため、サンゴ礁や哺乳類の生息地となっている海洋生物保護区11カ所の縮小または廃止を検討している。写真は、ハワイ沖のパパハナウモクアケア海洋国立モニュメントで撮影。米海洋大気局が2011年提供(2017年 ロイター)

米国のトランプ政権は、エネルギー開発を推進するため、サンゴ礁や哺乳類の生息地となっている海洋生物保護区11カ所の縮小または廃止を検討している。

トランプ大統領が4月に署名した大統領令によれば、計4億2500万エーカーに及ぶ保護区の見直しは、石油やガスの掘削地域を新たに開拓し、「米国の家庭やビジネスのエネルギー需要を優先する」戦略の一環だという。

だが、エネルギー業界の代表者らに取材したところ、そうした取り組みが的外れに終わる可能性が高いことが分かった。石油会社よりも、トランプ大統領が非難してきた風力発電業者に有益となる可能性が高いと彼らは言う。そしてどちらの業界も、保護区の開発には関心を寄せていない。オフショア開発は高コストな上、陸上での開発機会が比較的豊富にあり、保護された場所を開発すれば社会的な非難を浴びかねないからだ。

ホワイトハウスはコメント要請に応じなかった。

商務省は来月、太平洋と五大湖、大西洋にあるこれらの保護区について提言を行う予定。同省に寄せられた一般からのパブリックコメントの大半は、現在ある保護区の保存を支持している。

こうした保護区にどのくらい石油が埋蔵されているかは定かではないが、内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)の推定では、太平洋領海外大陸棚には100億バレルの石油が眠っており、米国が必要とするエネルギーの約2年分に相当する。その一部は、カリフォルニア州沖の海洋保護区と重なっている可能性があるという。

しかし業界は、同地域での開発にほとんど興味を示していない。

「会員企業で現在、この機会を求めている会社はない」と、米西部州の石油協会会長を務めるキャサリン・リヘイス・ボイド氏は、今回の見直しの対象に含まれているカリフォルニア州沖の4つの保護区について明かす。

この協会にはエクソンモービル、BP、シェブロン、コノコフィリップスのような総合エネルギー大手企業が加盟している。

これら企業もコメント要請に回答しなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソフトバンクG、オープンAIとの合弁設立が大幅遅延

ワールド

韓鶴子総裁の逮捕状請求、韓国特別検察 前大統領巡る

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

首都圏マンション、8月発売戸数78%増 価格2カ月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中