最新記事

北朝鮮

北朝鮮暴走に対する中国の見解――環球時報社説から

2017年9月19日(火)15時23分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

北朝鮮を「大暴れ孫悟空」にたとえた環球時報 REUTERS

9月16日、中国共産党系の環球時報が北朝鮮の弾道ミサイル発射に関する社説を発表。その全文を通して、北朝鮮暴走に対する中国政府の見解を詳細に解読する。

社説:北朝鮮が制裁に逆らってミサイル発射、国際社会は混乱するな

9月15日朝、北朝鮮は日本の北海道上空を通過する弾道ミサイルを発射した。高度770キロ、飛行距離は3700キロだった。これに対して中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」が9月16日に社説を発表。タイトルは「北朝鮮が制裁に逆らってミサイル発射、国際社会は混乱するな」だ。社説は習近平国家主席の意思を反映していると見ていいだろう。

中国の特徴としてミサイル発射の情報などに関しては、「日米韓などの報道に基づく」という形を取っている。環球時報は、「9月15日のミサイル発射は、北朝鮮の第6回目の核実験を受けて国連安保理が制裁決議を満場一致で決議した直後のことだ」とした上で、「朝鮮半島情勢に関して明確にする必要がある」と、以下の7項目に関して中国の見解を表明した。

中国の7つの見解

1.北朝鮮は自らが獲得した核・ミサイル技術を、いかなることよりも最も価値のあるものと位置付け、おまけに実質的な進展を遂げ、すでにアメリカ領のグアムを攻撃する能力を持っている(あるいは持つことに近づいている)ようだ。北朝鮮は技術的な発展に鼓舞され、いかなる警告も顧みず、アメリカ本土を攻撃することができる大陸間弾道弾ミサイルの研究開発に執着している。

2.北朝鮮がアメリカおよびその同盟国に先制攻撃する度胸を持つ可能性は低い。北朝鮮の核・ミサイル技術がどこまで改善されようとも、この一点は変わらないだろう。なぜなら、そのような行動に出れば、平壌政権の自殺行為だということは疑う余地がないからであり、平壌が何としてでも核兵器を持とうとしている目的は、「北朝鮮体制を維持させること」に他ならないからである。

3.(国連安保理)制裁は短期間内に北朝鮮の核・ミサイル発展を阻止することはできない。しかし国連安保理は制裁に関して一致を見て、国際社会が北朝鮮問題に関して団結し、大国間が互いに調整能力があることを示した。北朝鮮から見れば、大国の分裂ほどありがたいことはなく、大国が分裂すれば北朝鮮はその間、思い切って核・ミサイル活動に専念するゆとりを持ち得る。大国が北朝鮮のコントロールに関して分裂すればするほど、北朝鮮は奇跡を創り出し、最終的には核保有国への漠然としていた念願を現実のものにすることに成功するだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBは現行の政策運営枠組み撤廃でより厳格にインフ

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P上昇、終盤に買い GDP

ワールド

米・ウクライナ、復興投資基金設立協定に署名 米財務

ワールド

原油先物急落、サウジが増産示唆 米WTI21年3月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・ロマエとは「別の役割」が...専門家が驚きの発見
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中