最新記事

中朝関係

北朝鮮の核開発を支える中朝貿易の闇

2017年8月8日(火)11時30分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

それにしてもなぜ、中国政府はこれらの企業の取り締まりに及び腰なのか。この点について、情報当局者たちの見解は一致しない。一部の企業集団が、中国政府と太いパイプを持つのではないかとみる向きもある。共産党全国大会をこの秋に控え、習近平(シー・チンピン)国家主席ら政府指導部は、有力企業を敵に回したくないのかもしれない。

中国政府の反応が鈍いのは、北朝鮮が核保有国であることが、実のところ中国にとって都合がいいからではないかとの見方もある。なまじ北朝鮮の力が弱くて、韓国によって朝鮮半島が統一されれば、中国にとってはすぐ隣にアメリカの手厚い軍事支援を受ける国が誕生することになる。北朝鮮に核があれば、そのような事態になる可能性は低いから、中国にとってもそのほうが安心だというわけだ。

【参考記事】北朝鮮初のICBMは日本の領海を狙っていた?

webw170808-nk02.jpg

金正恩体制のもと、北朝鮮の核開発は着々と進む KCNA-REUTERS

トランプは手玉に取られた?

中国が問題の10社を秋までに取り締まらなければ、アメリカは一方的に制裁を科すと、米政府は中国側に伝えている。そしてそれは口先だけの脅しではないことを、トランプ政権は行動で示した。米政府は6月30日、北朝鮮の核ミサイル開発のためのマネーロンダリング(資金洗浄)に関わったとして、丹東銀行への制裁を発表した。

7月5日にはニッキー・ヘイリー米国連大使が、「アメリカは(北朝鮮と)貿易を続けるいかなる国も見逃さない」と、明らかに中国を念頭に置いた警告を発した。さらにビンセント・ブルックス在韓米軍司令官は同日、アメリカと同盟国は、北朝鮮における核拡散を阻止するため、必要なら戦争をする用意があると明言した。

トランプ政権の「軌道修正」は、かなり劇的だ。トランプは選挙戦のときから中国の貿易政策や外交政策を厳しく批判していたが、4月の米中首脳会談は友好ムードに終始。習との会談後、中国と北朝鮮の間には長い複雑な歴史があることが分かったと述べ、「北朝鮮を脅して態度を改めさせるのは容易ではない」という中国の主張を暗に受け入れたようだった。

だが、トランプは習の手玉に取られたというのが、中朝貿易を観察してきた情報機関やシンクタンクの見方だ。中国がその気になれば、北朝鮮の核開発をくじくことは可能だというのだ。

中国は長年、北朝鮮と貿易をする中国企業は小規模な「ならず者企業」だという立場を取ってきた。コソコソと闇取引に精を出す民間貿易会社で、当局がしっぽをつかむのは難しいというのだ。ところが6月に、アメリカのシンクタンクC4ADS(先進国防研究センター)がまとめた報告書によると、北朝鮮が大量破壊兵器を獲得するために国外に確立してきた資金と物資の調達システムは「集中的で、限定的で、攻撃に弱い――つまり破壊する機は熟している」という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国の証取、優良上場企業のリファイナンス支援 審査

ビジネス

欧州、ユーロの国際的役割拡大に備えを=オーストリア

ワールド

キューバの燃料事情は「危機的」とロシア、米の締め付

ビジネス

ユーロ圏投資家心理、2月は予想上回る改善 25年7
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 8
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中