最新記事

南シナ海

中国、シンガポールに圧力 南シナ海問題でASEANの軟化狙う

2017年8月14日(月)18時07分

昨年11月には、中国とシンガポールの緊張関係が表面化する事件が起こった。香港港湾当局が、演習地である台湾から本国に返送途中のシンガポール軍の装甲車9両を押収したのである。シンガポール、中国双方の国内で関係悪化をめぐって珍しく公然たる議論が行われる中、香港側は今年に入ってから押収した装甲車を返還した。

中国の国営有力紙「環球時報」は今年6月、中国・シンガポール間のかつての「特別の関係」が、南シナ海問題をめぐる不信感のせいで悪化していると報じている。

シンガポール経営大学法学部のユージン・タン准教授は、シンガポールがASEAN議長国に就任すれば、両国間で見解の対立がでてくるだろうと指摘する。

そうなれば、「中国が、対ASEAN関係において自分の主張を押しつけづらくなる可能性がある」とタン氏は話す。タン氏は、シンガポールの元外交官で、大統領指名の国会議員も務めた経験がある。

「シンガポールは、主権をめぐってどのような行動をとるべきか他国に指示する立場にはないが、ASEAN議長国としての立場で、中国に対して断固とした姿勢をとることは十分に考えられる」とも話す。

シンガポールのリー・シェンロン首相は、南シナ海での国際ルール遵守の重要性を強調している。一方の中国は、中国の領有権主張に「法的根拠なし」としたオランダ・ハーグの国際仲裁裁判所による裁定を拒絶している。

香港在住で、中国の安全保障を専門とするZhang Baohui氏によれば、中国は、「米国と中国のどちらかを選ぶ考えはない」とするシンガポールの姿勢が本物かどうか、疑っているという。

「中国政府内では、シンガポールが対中封じ込め戦略を煽っており、しかもASEAN諸国だけでなく、米国の同盟国である日本、インド、オーストラリアによる中国包囲網を望んでいる、という見方がある」と、Baohui氏は指摘した。

Greg Torode

[香港 8日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

OPECプラス、7月以降も増産継続へ 自主減産解除

ワールド

バチカンでトランプ氏と防空や制裁を協議、30日停戦

ワールド

豪総選挙は与党が勝利、反トランプ追い風 首相続投は

ビジネス

バークシャー第1四半期、現金保有は過去最高 山火事
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 2
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 5
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 6
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 7
    野球ボールより大きい...中国の病院を訪れた女性、「…
  • 8
    「すごく変な臭い」「顔がある」道端で発見した「謎…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    海に「大量のマイクロプラスチック」が存在すること…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 5
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 9
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 10
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中