最新記事

ロシア

ロシア、米大使館員など755人を追放。対ロ制裁強化案の報復で

2017年8月1日(火)18時30分
グラハム・ ランクツリー

プーチンはてのひらを返したトランプに怒っているのか?  Alexander Zemlianichenko-REUTERS

<大統領選介入疑惑やシリア問題などで悪化の一途をたどる米ロ関係がますます険悪に>

ロシア政府は、ロシア国内にあるアメリカ大使館や領事館で働く外交官など職員755名を国外退去にする、という方針を発表した。これを受けて米国務省は7月31日、「遺憾であり、必要のない措置だ」と述べた。

国務省当局者は、本誌に宛てた声明の中で、「国外退去による影響と今後の対応について、現在検討中だ」と述べた。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は7月30日、国営テレビのニュース番組で行われたインタビューに応えて、ロシアに駐在するアメリカ政府職員を9月1日までに出ていくよう要求すると述べた。ロシア政府はさらに、ロシア国内にあるアメリカの外交施設2カ所を閉鎖する。

【参考記事】プーチン、トランプ狂想曲を笑う----「政治的な統合失調症」とも

2016年12月29日、バラク・オバマ米大統領(当時)は、2016年大統領選挙でロシアがスパイ行為と選挙介入を行ったことを理由に、ロシアの外交施設を閉鎖したほか、ロシアの外交官35人を追放すると発表した。

今回のプーチンの措置は、それと比べても厳しい措置だ。アメリカ上下両院でロシアへの制裁強化法案が可決されたことを受けた報復措置だ。ドナルド・トランプ大統領もこの法案に署名する予定だと、ホワイトハウスは明らかにしている。

親ロ派トランプも仲良くできない

アメリカは、モスクワに大使館、サンクトペテルブルク、エカテリンブルク、ウラジオストクに領事館を置いており、全体で約1210人の職員がいる。2013年にアメリカ国務省監察官が公表した報告によると、そのうち934人は「現地採用」のロシア人だ。

アメリカ国務省に対し、今回の退去命令で現地採用のロシア人職員に影響があるかについて尋ねたが、回答は得られなかった。

トランプはこれまで、ロシアに対する制裁強化に強硬に反対してきた。それどころか、2016年12月にオバマ政権が閉鎖していたアメリカ国内のロシア外交施設2カ所の返還について、密かに検討していた。それが制裁強化法案に署名するとしたら、よほどロシア疑惑のプレッシャーが強くなっている表れだろう。

ロシアに対しては2012年以降、人権侵害や汚職などに加え、2014年3月にウクライナのクリミア地方をロシア連邦に編入したことに対して、一連の制裁が科されてきた。

【参考記事】プーチンの思うつぼ? 北方領土「最終決着」の落とし穴

トランプは今回の制裁法案可決に関して、大好きなツイッターでも沈黙を守っている。

マイク・ペンス米副大統領は7月31日、次のようにツイートした。「ロシアは引き続き、武力を使って国境線を引き直し、主権国家の民主主義を侵そうとするだろう」

さすがのトランプも、仲が良いとはなかなか認めにくい雰囲気になってきたことは確かだ。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵

ワールド

スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中