最新記事

世界保管計画

「世界の終末」に備えたデータ保管庫、ノルウェーの永久凍土に開設

2017年4月7日(金)15時15分
高森郁哉

スヴァールバル世界種子貯蔵庫 Heiko Junge-REUTERS

<北極圏の島に、世界各国の貴重なデータを500年以上保存することを目的とするデータ保管庫がオープン。この島では既に100万種近い植物の種を保管している>

ノルウェー領スヴァールバル諸島最大の島、スピッツベルゲン島。北極圏にあり、永久凍土が広がるこの島は、100万種近い植物の種を保管する「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」で最もよく知られる。この地に最近、世界各国の貴重なデータを500年以上保存することを目的とするデータ保管庫がオープンした。"世界最後の日に備えた書庫"として、科学系ウェブメディア「ライブ・サイエンス」などが紹介している。

デジタルデータをアナログメディアに保存

「Arctic World Archive」(北極圏の世界アーカイブ)と名付けられたこのデータ保管庫は、ノルウェー企業Piql(ピクル)が主導するプロジェクト。同社が公開した資料によると、このアーカイブはテキストから画像、動画や音声までさまざまなデジタルデータに対応。顧客から委託されたデータをオープンソースの標準保存形式に変換してから、独自技術の感光フィルムに記録し、最新のセキュリティー策を施した地下の保管庫に収められるという。同社はライブ・サイエンスの取材に応え、「保存されたデジタルデータを、感光フィルムに書き込む。巨大なQRコードをフィルムに書き込むようなものだ」と説明している。

Arctic-World-A.jpg

アーカイブに保存されたデータは、顧客がネット経由で検索可能。ソースコードに人間が読めるテキストと、汎用のファイル形式により、将来的にも特定のOSやメーカーに左右されずアクセスできる。Piqlは、フィルムの耐久試験の結果、少なくとも500年間は保存可能で、最長で1000年間保存できるかもしれないと主張している。

ライブ・サイエンスの記事によると、これまでのところ、ブラジルとメキシコの2カ国からデータが送られたとのこと。ブラジルは同国憲法を含むさまざまな史料、メキシコはインカ時代にまでさかのぼる貴重な歴史的記録をそれぞれ保存するという。

RTR1XL6Xa.jpg

Bob Strong-REUTERS

スヴァールバル世界種子貯蔵庫とは

データ保管庫に先行するスヴァールバル世界種子貯蔵庫は、2008年に操業開始。デンマーク人植物学者ベント・スコウマン氏が提唱し、ビル&メリンダ・ゲイツ財団など援助を受けてノルウェー政府が完成させた。保存されている種子の種類は、当初の約18万7000種から、2017年2月の時点で93万種を超えたという。

なぜ北極圏の島にこのような保管庫が作られるのか。最大の理由は、1920年に締結されたスヴァールバル条約により、同諸島が加盟国の自由な経済活動が認められた非武装地帯になっているからだ。この条約の原加盟国は欧州主要国や日米など14カ国。その後中国やロシアも批准し、現在は40カ国以上が加盟している。

(ノルウェー政府が公開している動画

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 5
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中