最新記事

アメリカ経済

米NAFTA離脱表明へ トランプ就任100日目にも大統領令に署名

2017年4月27日(木)11時56分

4月26日、米政府高官は、トランプ大統領が北米自由貿易協定(NAFTA)離脱の大統領令を出すことを検討していることを明らかにした。写真はトランプ氏。ワシントンで同日撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ米大統領は、北米自由貿易協定(NAFTA)離脱の大統領令を出すことを検討している。複数の米政府高官が26日明らかにした。大統領令が出る時期は不透明だが、トランプ大統領就任100日目の29日に署名される可能性もあるという。

トランプ大統領のNAFTA離脱検討は、正午前に米政治専門メディア「ポリティコ」が報道。金融市場に動揺が走り、メキシコ、カナダの株・通貨が下落した。

トランプ大統領はかねてメキシコとカナダと共に構成するNAFTAが米国内の雇用を奪っていると批判し、米国に有利な条件で合意できなければ離脱するとしていた。

ただ1月の大統領就任後に早速、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を打ち出す一方で、NAFTAについては具体的な動きはみせていなかった。

8月にNAFTA再交渉を想定していたメキシコは対応を速める必要を迫られる。メキシコ政府は、NAFTA離脱の米大統領令に関する報道に沈黙。ビデガライ外相は、悪しき協定を受け入れるくらいなら交渉のテーブルから離れると述べた。

トランプ大統領が最近木材などの貿易で批判を強めているカナダは、NAFTA再交渉を巡る協議を始める用意があると表明。外務省報道官は「再交渉を巡る協議は現時点では始まっていないが、カナダはいつでも交渉の席に着く用意がある」と述べた。

慎重に行動

検討中とされるNAFTA離脱の大統領令案の詳しい内容は現時点で不明。ある政府高官は「一定の討議がされている。早めに進めるべきとの意見が一部から出ているが、それはどの問題についてもみられることだ」と語った。

別の高官によると、NAFTAに関する進め方について政府内でさまざまな意見がある。

「NAFTAの再交渉あるいは離脱のプロセスを始めるにあたり、どのようなステップを踏むことができるか、が議論されている」といい、トランプ政権は慎重に進める意向という。


=====

米国内への影響も大きく

国内雇用の保護など、トランプ大統領の米国第一主義に根ざしたNAFTA離脱方針だが、米国に跳ね返ってくる影響も大きい。実質ゼロ関税やメキシコの安い人件費の恩恵を享受している自動車産業などの収益を圧迫するほか、メキシコへの輸出を大きな収入源とする農家にも打撃となる。

今回の動きを受けシカゴのトウモロコシ先物は下落。米トウモロコシ生産者団体は「トランプ大統領。あなたの当選を支援したのは米国のトウモロコシ生産家だ。NAFTAからの離脱は米国農業にとって惨事だ」とする声明を発表した。

カナダロイヤル銀行のエコノミスト、ポール・ファーレー氏は、NAFTAからの完全離脱は、NAFTAからの恩恵を失うことを意味すると指摘した。

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダ、カナダにEV生産拠点 電池や部材工場含め総

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中