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ネットでコンテンツの消費はするが、発信はほとんどしない日本の子どもたち

2017年2月22日(水)16時40分
舞田敏彦(教育社会学者)

デジタル機器の用途は国によって異なる。日本の生徒は、創作物を発信する頻度は低いが、コンテンツをダウンロードしたり、オンライン・ゲームをしたりする頻度は高い。<図2>は、横軸に「学校外で週1・2回以上」創作物を発信する割合、縦軸にオンライン・ゲームをする割合をとった座標上に46の国を配置したグラフだ。

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<図1>とは裏腹に、パソコンやスマホ等でゲームをする頻度は日本が最も高い。一概にとがめられることではないが、コンテンツを消費するだけの立場からは、創造性(クリエイティビティ)は生まれない。

15世紀の印刷術の発明は、活版印刷の発明者の名前を取ってグーテンベルク革命と言われるが、インターネットの出現は「ポスト・グーテンベルク革命」と形容される(潮木守一・名古屋大学名誉教授)。一部の人間だけでなく、誰もが手軽に情報を発信できる技術革新だ。その恩恵を、もっと生産的な方向で利用するように子どもたちを導いていきたい。

【参考記事】教育で貧困の連鎖を断ち切る、カンボジア出稼ぎ家庭の子ども支援

文部科学省の次期学習指導要領の目玉は「アクティブ・ラーニング(AL)」だが、AL形式の授業では、生徒が創作物を積極的に発信し、外部のフィードバックを反映して洗練させていく活動があっても良いのではないだろうか。生徒のやる気を高めることができるはずだ。

ちなみに日本の生徒は、スマホジャンキーでもネット中毒でもない。13~15歳のスマホ所有率は46%で、主要国の中では最も低い(内閣府『わが国と諸外国の若者の意識に関する調査』2013年)。1日6時間以上ネットを使う15歳生徒の割合も、45カ国中43位だ(OECD「PISA 2015」)。

重要なのはスマホの使用をやみくもに制限することではなく、生産的な使い方をするように指導することだ。デジタル機器をうまく使えば、学校教育の効果を飛躍的に高めることも可能だろう。

<資料:OECD「PISA 2015」>

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