最新記事

キャリア

M&Aは悪? 堀江貴文氏は「金だけが無色透明」と言った

2017年2月3日(金)15時37分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 そもそも、上場企業と上場企業のM&Aは、買い手側に不利な取引です。買い手は売り手に対し、コントロールプレミアムというフィーを本来の会社の値段に3割ほど(時には5割以上も)プラスして支払います。これは、本来の会社の株の値段に対して、余分な値段を支払って経営権の取得をしているということです。

 これは実際、買い手側は買った瞬間に損をしていることになります。買う時点で、本来の株価の3割増しで買っているわけなので、変な言い方をすれば、M&Aはコントロールプレミアム分のマイナスから始まるゲームになるわけです。

 しかし、それでも上場企業同士のM&Aは年々増加しています。

 これは、買い手側が、3割高い値段で企業を購入しても元が取れると考えているからなのです。言い換えれば、3割マイナスから始めても、経営状態を前のオーナーよりも良くさせることができる、という話なのです。

 このように、M&Aというものは、より経営を上手に行うことができる自信のある経営者が、他の経営者から会社を譲り受ける行為なのです。

M&Aは「社会悪」か

 これを聞いて、何か嫌な感じを受けた方もいらっしゃるかもしれません。M&Aや金融の世界には、「乗っ取り」とか「マネーゲーム」といったネガティブなイメージが付いて回ります。

 一時期、堀江貴文氏がライブドアの社長在任中、メディアで「金で買えないものなどない」という発言をして非常に非難されたことがあります。当時M&Aにガンガン力を入れていた堀江氏がこのような発言をしたのを、メディアがはやし立てたため、金融イコール悪みたいな印象がついてしまったのかもしれません。

 M&Aという概念にも、本当は売りたくもない社長から、金を積んで会社を取り上げてしまうもの、というようなイメージがあるかもしれません。

 より能力の高い経営者が企業を譲り受けるというと、なんだか、能力が高い経営者が低い経営者から会社を取り上げ、追い出してしまうかのようなイメージができてしまうと思います。でも、現実はそんなことはありません。

 M&Aで会社を売却するとき、売り手のオーナーはちゃんと金銭的対価を受け取っているのです。

 企業を相応に成長させた対価をきちんと受け取ったうえで、納得して買い手にバトンタッチするのです。買い手と売り手の合意がなければ、M&Aというものは成立しません。

 敵対的買収などという言葉がありますが、これも言葉のあやです。売り手側の株主が合意しているからこそ、買収が成り立つのです。スクイーズアウト、売渡請求等という言葉もM&Aには出てきますが、それ相応の対価も払わずに、勝手に乗っ取ったり、追剥をしたりするような真似は、法律上不可能です。メディアが自分たちで理解できない金融というものを、さぞ悪者のように書き立ててしまっただけでしょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率60%に小幅上昇 PCE

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中