最新記事

脳内ホルモン

「脳に作用するバイアグラ」が開発? 英研究者が効果を確認

2017年1月27日(金)15時30分
高森郁哉

DuxX-iStock

<脳内で生成されるホルモン「キスペプチン」を被験者に投与することで性的興奮を促進する効果があることを英研究者が確認した。性心理的障害(心理的な性の問題)への治療に役立つ可能性があるという。>

 英インペリアル・カレッジ・ロンドン医学科の研究者らが、脳内で自然に生成されるホルモンを被験者に投与することで、性的興奮を促進する効果を確認したと発表した。性心理的障害(心理的な性の問題)への治療に役立つ可能性があるという。臨床分野の学術誌「Journal of Clinical Investigation」に論文が掲載された。

生殖機能を促進する「キスペプチン」

 同大学のアレキサンダー・コムニノス博士らが注目したのは、脳内の視床下部で作られるキスペプチンというホルモン。他の生殖腺刺激ホルモンの分泌を促進する作用があり、思春期の開始にも重要な役割を果たすことが知られている。

 研究チームは、健康な若い男性の異性愛者29人を対象に、キスペプチンまたは偽薬を静脈注射。カップルの性的な画像やロマンチックな画像を見せてMRIスキャナーで脳を調べたところ、キスペプチンを投与された男性の反応が強化されることが確認された。

 研究者らは、この結果はキスペプチンが性と愛の行動にかかわる神経回路を刺激することを示すものだとし、性的不能などの問題を抱える患者の治療に役立つのではないかと考えている。

抗うつ作用の可能性も

 研究チームはまた、被験者に対して、ネガティブな感情を喚起する画像も見せた。すると、キスペプチンを投与された場合、ネガティブな感情を抑える働きをする脳部位の活動が強化されることが確認された。

 コムニノス博士は、「性心理的障害とうつ病は、往々にして併発する健康上の大きな問題だが、今回の成果はこれら2つの治療にキスペプチンが役立つ可能性を示すものだ」と述べている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

イタリア、中銀の独立性に影響なしとECBに説明へ 

ワールド

ジャカルタの7階建てビルで火災、20人死亡 日系企

ワールド

韓国国民年金、新たなドル調達手段を検討 ドル建て債

ビジネス

台湾輸出、11月は15年半ぶりの伸び AI・半導体
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中