最新記事

<ワールド・ニュース・アトラス/山田敏弘>

オバマを待ち受ける順風満帆すぎる第二の人生

2017年1月26日(木)19時00分
山田敏弘(ジャーナリスト)

 さらに、オバマは大統領就任前から出版社と「題材は未定のノンフィクション本」を執筆する契約を結んでいたが、任期中は保留にしていた。また2014年にも子供向けの本を書く契約もしているため、退任後はこうした契約を進めるために、まず本の執筆に取り組むことになるだろうと言われている。さらにこれまでも自叙伝を出版しているが、大統領時代の秘話などを含めた内容の本にすれば、米世論も注目するはずだ。

 今後のオバマについてはさまざまな憶測が出ている。オバマは以前、プロバスケットボールチームのオーナーになりたいと発言していたこともあるし、音楽配信会社に興味を示していたこともある。また、もともと弁護士だったことから、大学で法律を教えたいとも語っていた。おそらく、オバマが望めば、ある程度のことは実現可能だろう。

 とは言え、オバマはそもそも人権派の弁護士だ。大統領時代のイメージから考えても、講演でぼろ儲けするビジネスマンというよりは、市民運動や人権問題に取り組む姿のほうがしっくりくる。

【参考記事】オバマ米大統領の退任演説は「異例」だった

 事実、米メディアでは、8年の任期中にオバマが実現できなかった政策などについて引き続き取り組んでいくだろうという観測が見受けられる。例えば、刑事司法制度改革や移民問題、銃規制や核不拡散などの問題だ。オバマは引き続き、これらの課題に関して発言していく可能性が高い。

 また、かつてオバマが取り組んでいた、コミュニティサービスに再び携わるとの見方もある。オバマはすでに自らの名を冠したオバマ基金を立ち上げていて、例えばシカゴではオバマは大統領図書館の建設に主導的役割を果たしている。またオバマは2つのNGO団体と関係があり、そこでの活動がオバマを以前のような公共サービスとの関わりに巻き込むことになりそうだ。

 また社会のために働くということなら、上院議員への復帰を狙えばいいのではないか、という考えもあるかもしれないが、その可能性は低い。もちろん元大統領が再び国会議員になることは法律上可能だが、19世紀以降、アメリカでそんなケースはない。

 ではオバマ自身は第二の人生について、どう考えているか。オバマは2015年にワシントン州での学生との対話で、自らの退任後について言及し、「以前やっていたような、人々を助けるための道を探そうと取り組む仕事に戻ることになるだろう」と、述べている。「私が本心でやりたいのはそういう仕事なのだ」

≪執筆者≫
山田敏弘

国際ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などで勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で国際情勢の研究・取材活動に従事。訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)。現在、「クーリエ・ジャポン」や「ITメディア・ビジネスオンライン」などで国際情勢の連載をもち、月刊誌や週刊誌などでも取材・執筆活動を行っている

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英アングロ、BHPの買収提案拒否 「事業価値を過小

ビジネス

為替、基調的物価に無視できない影響なら政策の判断材

ビジネス

仏レミー・コアントロー、1─3月売上高が予想上回る

ビジネス

ドルは156.56円までさらに上昇、日銀総裁会見中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中