最新記事

中国

トランプ政権誕生と中国

2017年1月20日(金)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

スイスを訪問し国連欧州本部を訪問した習近平国家主席 Denis Balibouse-REUTERS

 トランプ大統領の就任演説が今夜に迫った。トランプ政権誕生により中国は何を狙うのか?グローバル経済のプレイヤーの交代や「一つの中国」懐疑論に対する対抗など、経済貿易と安全保障に関して包括的に概観する。

グローバル経済のトップ・プレイヤーを狙う中国

 トランプ氏は選挙中からTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)離脱を宣言していたが、当選後も繰り返してきたので、政権誕生後も離脱の方針は変わらないだろう。北米大陸におけるNAFTA(北米自由貿易協定)さえ見直すとしているくらいだから、グローバル経済のリーダーからは降りることになる。それでもアメリカが豊かになり、「アメリカ・ファースト」を優先するようだ。

 となれば、アメリカが不在となったグローバル経済のプレイヤーとして、至るところで存在感を高めていこうと狙っているのが中国である。

 一番目の戦略として、中国はまずRCEP(東アジア地域包括的経済連携。東南アジア諸国連合加盟10カ国に、日本、中国、韓国、インド、オーストリア、ニュージーランドを含めた16カ国)内でGDPが最も高い国として、リーダーシップを発揮しようとしている。 

 そのためアメリカも入っているFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)よりも前に、まずはRCEPにおいてリーダーとなるべく、昨年のペルーAPECで、東アジアの経済連携であるRCEPに、ペルーを加盟させる方向で習近平国家主席は積極的に動いた。

 これにより、安倍首相が最も避けたかった「中国による貿易ルール作り」に一歩近づいたことになる。

 安倍首相が、トランプ政権がTPPから離脱することが分かっている中でも、何としても日本の国会でTPP加盟可決に漕ぎ着けたかったのは、そのためだったと思う。1月12日から17日にかけて、安倍首相がフィリピン、オーストラリア、インドネシアおよびベトナムを歴訪したのは、その中にTPPに加盟している国(オーストラリア、ベトナムなど)があるからだろう。

 一方、習近平国家主席はその間、スイスのダボスを訪問し、初めてダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)(1月17日~20日)に出席した。これが二番目の戦略だ。

 中国はこれまで、ダボス会議には国務院総理レベル(党内序列ナンバー2かナンバー3)などが出席していたが、国家主席(党内序列ナンバー1)が出席したことはない。

 この力の入れようは、ほかでもない。アメリカが不在となったグローバル経済のトップリーダーとして、中国が世界のグローバル経済を牽引していこうという狙いがあるからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IAEA高官がイラン訪問へ、「協力の枠組み交渉」と

ワールド

北朝鮮、米韓演習を非難 「断固とした」対抗措置警告

ビジネス

米アンダーアーマー、一段減収見込む 関税コスト上昇

ワールド

イケア、中国のJDドットコムに出店 ネット販売増見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 2
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 3
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋肉は「光る電球」だった
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 7
    伝説的バンドKISSのジーン・シモンズ...75歳の彼の意…
  • 8
    60代、70代でも性欲は衰えない!高齢者の性行為が長…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中