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自治体ごとの出生力の多様性:出生数・出生率のデータを細かく見てみる

2016年11月28日(月)17時20分
筒井淳也(立命館大学産業社会学部教授)

■三世代世帯比率

 次に、この多様性は必ずしも地域の都市度といった一律の基準によって説明できるとは限らないという点にも注意が必要です。つまり、同じ都市度の自治体でも、地域に応じた特色がある、ということです。

 たとえば三世代同居と出生率の関係を示した下の図4をみてください。

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図4 三世代世帯の比率と出生率

 全体的な傾向としては、同じ三世代世帯の比率の自治体でも出生力は多様であることがわかります。都道府県の個体特性と自治体人口規模を統制した回帰分析(固定効果推定)をすると、三世代世帯比率は出生力に有意な効果を与えません(ただ、これはマクロデータの分析なのでかなり大きな留保が必要ですが)。

 三世代同居同居比率が低くても出生力が高い自治体はいくつもあります。実は、これらの自治体には人口規模が比較的大きなものも含まれています。

 自治体単位で少子高齢化を考えるときは、一定の人口規模以上でしかも出生率が高い自治体に注目する必要があります。人口規模が多くても出生率の低い東京都の自治体はもちろんのこと、出生力が高くても人口規模が小さい自治体もあまり参考になりません。

 この点で、どういった自治体が「優れた」モデルになりうるのかについて、次の記事で明らかにしていこうと思います。


[筆者]
筒井淳也
立命館大学産業社会学部教授
家族社会学、計量社会学、女性労働研究。1970年福岡県生まれ。一橋大学社会学部、同大学院社会学研究科、博士(社会学)。著書に『仕事と家族』(中公新書、2015年)、『結婚と家族のこれから』(光文社新書、2016年)など。編著に『計量社会学入門』(世界思想社、2015年)、『Stataで計量経済学入門』(ミネルヴァ書房、2011年)など。official site:筒井研究室

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。


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