最新記事

米大統領選

中国は米大統領選と中国に与える影響をどう見ているのか?

2016年11月7日(月)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

(政府系メディアにこのような結論を導き出させるアメリカの大統領選に、中国の民主活動家らは大きな失望を味わっている。「これでは中国の民主化運動に大きな打撃を与え、民主化への道を遠のかせる」というメールが、筆者のもとにも届いている。)

 ●中国の政治体制は、中共中央政治局常務委員が複数の大統領のような存在で、現在は7人の大統領の「合議制」によって政策を決めているようなものだ。アメリカ大統領選の醜いスキャンダル合戦を見ていると、中国の政治体制の方が優れているのではないかと思う。

 ●もちろん、一党専制下での市場経済は、党員の腐敗を生み、貧富の格差を広げてきた。だからいま党は、全力を挙げて腐敗を撲滅し貧富の格差を縮めようと努力している。しかし、アメリカの「民主主義と資本主義」は、やはり激しい貧富の格差を生んでいるし、腐敗も生んでいる。どちらがいいのか、少なくとも経済発展という側面から見たときに、アメリカの制度がいいという結論を出すのは困難である。

(中国の民主活動家からは、この点においても、アメリカ大統領選における現状に関して大きな失望を味わっているというメールが来ている。)

 なお、どの分野に入れていいか分からないので、念のため最後に人権問題に関する中国の見方を付け加えておこう。

 ●ヒラリーが当選した場合は、オバマ同様、「他国の人権問題」に関してイチャモンを付けてくるだろう。しかしトランプの場合、他国のことなど言っておられず、自国における彼自身の人権問題、移民問題などで非難を受けるだろうから、中国に対して人権問題で非難してくる可能性はないだろう。

 だから、トランプが当選した方がいいとまでは言ってないが、まあ、そういうニュアンスの回答があった。

 以上、中国が米大統領選と中国に与える影響をどのように見ているかに関して、中国側の意見のみを、ただ列挙した。「いや、それは......」と言いたい点も多々あるが、それを言い始めたら途方もなく長くなる恐れがあるので、控えることとしよう。


endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週

ビジネス

マスク氏報酬と登記移転巡る株主投票、容易でない─テ

ビジネス

ブラックロック、AI投資で各国と協議 民間誘致も=

ビジネス

独VW、仏ルノーとの廉価版EV共同開発協議から撤退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 2

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 3

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 4

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「香りを嗅ぐだけで血管が若返る」毎朝のコーヒーに…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中