最新記事

地震

イタリア中部、地震活動地帯でも歴史建造物と財政難で対策遅れる

2016年8月28日(日)19時20分

安全基準

 市民保護の専門家による2008年の調査によると、同国で最も被害を受けやすい中部では、わずか14%の建物しか耐震基準を満たしていなかった。

 新しい建物の建築に関して、かなり厳しい基準が同年新たに設けられたが、ほとんどの家やオフィスは地震活動の危険にさらされたままだった。

 イタリアの全国保険協会によって先月公表された報告書によると、同国の3分の2の地方自治体が地震帯に位置し、それと同じくらいの割合で建物も耐震性を備えていなかった。

「いくつかのことは改善された。しかし、もっとできるはずだ」と、地質研究所のトルトリーチ氏はロイターに対し、こう述べた。

「真の問題は、耐震基準がなかった1970年代以前に建造された建物にある。この国は、寿命に限りがあるセメントに覆われている」と同氏は言う。

 中世から続くすべての村落とルネサンス時代の宮殿の魅力を奪うことなく、それらの耐震を強化するためにかかるばく大な費用を考えると、イタリア全土の古い建物を強化し、安全性を高めるどんな施策も激しい抵抗に遭うだろう。

 トルトリーチ氏は、政府が全国的に安全性を高めるインセンティブを提供することができると語る。しかし、欧州最大規模の債務にあえぐなか、イタリアは民間セクターに気前の良い奨励策や、あらゆる公共建造物に安全対策を施すのに必要な大規模な投資を行えるほどの余裕はない。

 65歳のアルティエロ・チナグリアさんは、アルクアータ・デル・トロント村でがれきに囲まれながら、日本式の安全基準をイタリアに導入することには悲観的なようだ。

「何をすればいいのか。新しい建物のために古い建物を取り壊すことなどできない。これらの街は夏は観光のために存在し、観光客は古くて美しい建造物を見たいと思っている」とチナグリアさんは話す。

「できることは何もない」

(Crispian Balmer記者 翻訳:高橋浩祐 編集:伊藤典子)

[ローマ 24日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル指数下落、雇用統計は強弱混合 失

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、経済指標を精査 エ

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中