最新記事

テロ

アメリカでのISIS関連事件、主流は「一匹狼」よりチームタイプ

2016年6月17日(金)19時21分

6月14日、フロリダ銃乱射事件は、オマル・マティーン容疑者の単独犯行とされている。それが本当であれば、過激派組織「イスラム国」支持者の関与が疑われる米国の事件においては、例外的なケースだろう。写真はフロリダ州オーランドで犠牲者の写真を前に祈りをささげる男性(2016年 ロイター/Jim Young)

 米フロリダ州オーランドの同性愛者向けナイトクラブ「パルス」で49人が殺害された銃乱射事件は、オマル・マティーン容疑者の単独犯行とされている。それが本当であれば、過激派組織「イスラム国(IS)」支持者の関与が疑われる米国の事件においては、例外的なケースだろう。

 12日に発生した米国史上最悪の乱射事件を機に、当局者からは「ローンウルフ(一匹狼)」型の攻撃に対する警告が改めて発せられている。それは通常、ネット上の暴力的なプロパガンダを通じて過激化し、犯行計画を練る孤独な個人といったイメージを喚起する。

 だが、2014年以来、米司法省が起訴したIS関連の事件約90件をロイターが検証したところ、起訴された者の4分の3は、2人から10人以上の共犯者で構成される集団に属しており、直接顔を合わせて犯行計画を練っていたとされている。

 裁判記録によれば、直接の会合が行われていない事件でも、被告はほぼ必ず、ショートメッセージや電子メール、交流サイトなどを介して他のISシンパと接触していた。完全な単独犯行の容疑で起訴されている例は10件に満たない。

 過激主義の問題やテロ対策の専門家によれば、「一匹狼」というイメージは、個人が似たような考えを持つ人々との直接の交流、いわば「狼の巣」を通じて過激化していく例がどの程度あるのかを見えにくくしてしまうという。

 「ネット上でのやり取りに注目するあまり、我々は非常に人間的なつながりが生まれていることを見逃している」とフォーダム大学(ニューヨーク)の国家安全保障センターを運営するカレン・グリーンバーグ氏は指摘する。

 米当局は13日、犯行中にISへの忠誠を表明していたマティーン容疑者が何らかの支援を得ていたかどうかを調査したが、関係者は、他に実行犯はいなかったと考えていると強調している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏サービスPMI、4月速報1年ぶりに50上回る 製

ビジネス

ECBは6月利下げ、それ以降は極めて慎重に臨むべき

ビジネス

日本の格付け「A」に据え置き、アウトルック「安定的

ビジネス

超長期国債中心に円債積み増し、リスク削減で国内株圧
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中