最新記事

シリア

ISIS処刑部隊「ビートルズ」最後の1人、特定される

2016年5月25日(水)17時10分
ジャック・ムーア

FACEBOOK

<ジャーナリスト後藤健二の殺害にも関わったとみられるISISの「ビートルズ」こと、イギリス出身者4人のグループ。謎に包まれていた最後の1人の身元が判明した> 写真はシリアに潜伏中のシャフィ・エルシーク

 ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)の処刑部隊で人質たちから「ビートルズ」と呼ばれ、恐れられているグループがある。イギリス人4人から成るグループで、その最後の1人が27歳のロンドン出身者だと明らかになった。

「ビートルズ」の異名が知れ渡るようになったのは、4人の欧米人――アメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリーとスティーブン・ソトロフ、そしてイギリス人援助関係者のデービッド・ヘインズとアラン・ヘニング――の処刑動画が公開されたのがきっかけ。斬首を実行したのは、4人の中で最も悪名高いモハメド・エンワジ、通称「ジハーディ・ジョン」だ。

【参考記事】ラマディ陥落か、ISISで残ったのは外国人戦闘員だけ

 エンワジは2015年11月、米軍のドローンによる空爆で殺害された。「ビートルズ」の他のメンバーは、アレックス・コーティー(逃亡中)、エイン・デービス(昨年トルコで逮捕)、そして今回、ワシントン・ポストとバズフィードの取材により身元を特定されたシャフィ・エルシークだ。

 4人ともロンドン西部の出身だ。ISISが拘束した人質らに暴行や拷問を加え、殺害する役を担っている。

 エルシークの一家は1990年代にスーダンを逃れ、イギリスに定住した。少年は「シャフ」と友人たちに呼ばれ、ロンドン西部のホワイトシティで育った。職業は機械工。サッカーチーム「クイーンズ・パーク・レンジャーズ」(英プレミアリーグ2部)のサポーターだった。エルシークは21歳の時に、カナダに住むエチオピア人の女性と結婚している。

あっという間だった過激化

 母親のマハ・エルギゾウリがワシントン・ポストの取材に応じ、息子の過去を語ったところによれば、エルシークの「過激化」はあっという間だった。ロンドン西部のイマーム(指導者)、ハニ・アルシバイの説教に通い始めると、すぐさま過激思想を持つようになったという。

【参考記事】ISISの支配下には31,000人以上の妊婦がいる

「私の子供たちは完璧だった。それがある日、突然変わった」とエルギゾウリは言う。彼女はアルシバイの元を訪れ、平手打ちを喰らわして「息子に何をしたの?」と詰問したという。

 エルシークはアラビア語に堪能で、シリア人の妻と共に、シリア北西部の都市アレッポに潜んでいるとみられている。エンワジ(ジハーディ・ジョン)の殺害後、米情報機関は彼も殺害対象としているようだ。

 母親のエルギゾウリには、なぜ息子がISIS「ビートルズ」の一員なのか、見当がつかないし、その事実を信じられない。「あの子はもう、私の子ではない。私が育てた息子ではなくなってしまった」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、シリア暫定大統領と会談 イスラエルとの

ワールド

米特使、16日にトルコ入り ウクライナ停戦協議で

ビジネス

物価目標に向け進展、関税で見通しに懸念=ジェファー

ワールド

カタール、ボーイング航空機購入契約に署名 2000
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 2
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 5
    iPhone泥棒から届いた「Apple風SMS」...見抜いた被害…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    終始カメラを避ける「謎ムーブ」...24歳年下恋人とメ…
  • 8
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 3
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 4
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 9
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中